カテゴリー: 病気

  • 夏に多い「とびひ(伝染性膿痂疹)」とは? 薬剤師が原因、治療、家庭での注意点をわかりやすく解説

    夏になると、子どもの肌にポツポツとできる水ぶくれ。
    「虫刺されかと思ったら、かさぶたになって広がってきた…」
    それ、もしかするととびひ(伝染性膿痂疹)かもしれません。
    今回は、薬剤師の視点からとびひの原因・症状・治療・家庭での注意点をわかりやすくまとめます。

    • 主に乳幼児〜小学生が多い(特に2〜6歳)、プールでの集団感染の報告もある
    • 皮膚が薄く、汗やかゆみによるかきむしり行動が多いことが原因
    • 夏の高温多湿環境で菌が増殖しやすい
    • まれに高齢者や糖尿病患者でも発症(免疫低下時)

    とびひは患部を触った手や指を介して接触感染します。

    水ぶくれやただれから出る浸出液の中に原因菌が存在し、それらが広がっていくためで、感染力が高いのも特徴の一つです。

    健康な皮膚であれば感染リスクは低いのですが、湿疹、アトピー、虫刺され、傷、あせも、皮膚乾燥などがあると感染リスクが高くなります。

    また、鼻の中には原因菌が常在しているので、小鼻や口まわりに傷があると感染しやすくなります。

    鼻をほじる事でも、その手から他の部位や傷口に原因菌が広がることもあります。

    兄弟で感染しあう事もあるので、環境や生活習慣にも注意が必要かもしれません。

    ■症状

    • 水ぶくれ(水疱)やかさぶた(痂皮)ができる
    • かゆみ・痛みを伴い、掻くと周囲に広がる
    • 顔・手足・体幹などに多く見られる
    • 重症例では発熱やリンパ節の腫れを伴うことも

    ■原因菌

    • 黄色ブドウ球菌:水ぶくれができる「水疱性膿痂疹」
    • A群β溶血性レンサ球菌:かさぶたになる「痂皮性膿痂疹」

    どちらも人の皮膚や鼻腔に常在する菌です。

    かき壊しなどの傷口から入り込み、炎症や感染を起こします。

    ■検査と診断

    多くの場合は見た目の症状で診断されます。

    再発や重症例では、膿から細菌を培養して原因菌を特定することもあります。

    予後

    適切な治療を行えば、1週間程度で治癒します。

    ただし、溶連菌型では急性糸球体腎炎の合併に注意が必要です。

    外用抗菌薬(軽症〜中等症)

    近年ではゲンタマイシンに原因菌が耐性を示し、無効であることがあります。

    感染範囲が狭い場合等は、下記の様な抗菌薬の塗り薬が中心で治療を行っていきます。

    • フシジン酸ナトリウム(フシジンレオ軟膏)
    • ナジフロキサシン(アクアチム軟膏)
    • テトラサイクリン(アクロマイシン軟膏)

    患部を石けんでやさしく洗いシャワーで洗い流した後に、外用薬を塗ってください。

    かさぶたの下にも菌が残っているため、清潔を保つことが重要です。

    塗り薬を塗って、さらにガーゼで保護するのが基本です。

    感染が広がっている場合や、集団感染を防ぐ目的で抗生物質の内服を行います。

    原因菌によって下記の様なセフェム系、ペニシリン系、ペネム系などが選択されます。

    • セファレキシン(ケフレックス)
    • セフカペンピボキシル(フロモックス)
    • アモキシシリン(サワシリン)
    • ファロペネム(ファロム)

    黄色ブドウ球菌が原因である場合はセフェム系が第一選択となりますが、溶連菌ではペニシリン系が第一選択となります。

    3~4日間抗菌薬を内服しても効果が無く、耐性菌(MRSA)が疑われる場合は、耐性のない抗菌薬に変更を検討します。

    かゆみ対策(補助療法)

    • かゆみが強い場合は抗ヒスタミン薬(アレグラ、ザイザルなど)でかきむしり防止。
    • 皮膚を傷つけないことが治癒の早道です。


    清潔を保つ

    • 1日1回は石けんで幹部をやさしく洗う
    • 泡で包み込むように洗い、強くこすらない
    • 患部が水やお湯で濡れるのは問題ないが、湯舟は細菌が繁殖しやすいので、シャワーが望ましい。

    ■感染予防のために

    • 手や皮膚を手洗いやシャワーなどで清潔に保つ
    • 傷口は洗って、ガーゼなどで保護する
    • 爪を短く切り、ひっかいて皮膚を傷つけないようにする
    • 症状が悪化したり、とびひが広がることを防ぐために触ったり掻いたりしない
    • タオルや衣類は感染者と共用しない

    入浴時やプールでは、水を介して感染する事はありません。

    しかし感染者との入浴は接触感染する可能性があるので、感染時は兄弟別々に入浴しましょう。

    プールは他者への感染リスクと症状悪化も考えられるので、とびひの症状が治まるまではお休みするようにしましょう。


    とびひは、火の粉が飛ぶようにあっという間に広がる様子から、その俗称となりました。

    保育園では暖かい時期に感染が流行する事もありますし、兄弟間での感染や二次感染も多いです。

    特に梅雨時期から夏場にかけては皮膚科は混みあう事が多いので、早い時間帯に病院へ行ったり、予約をしてから行く事もおすすめします。

  • ARBの『臓器保護作用』と『血圧が安定して低下するのに時間がかかる理由』

    ARBの『臓器保護作用』と『血圧が安定して低下するのに時間がかかる理由』

    高血圧の治療では高い降圧力と即効性に加え、一部には狭心症にも有効なCa拮抗薬がよく処方されるというイメージを持っている方も多いかと思います。

    逆にARBは比較的ゆっくりと降圧作用を発揮し、心不全に有効というところでしょうか。

    今回はARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)の特徴を2つの観点から深掘りしてみました。

    ARBの特徴として、血圧を下げる降圧作用に加えて、臓器保護作用(腎保護作用・心保護作用)があります。

    ■腎保護作用

    ARBは、腎臓の輸出細動脈を拡張させて糸球体内圧を下げ、糸球体の過剰なろ過を防ぐことで尿タンパクが減少します。実は尿タンパクが出ていること自体が腎臓への負担となります。

    さらに糸球体硬化の進行による腎機能低下を抑制させる効果も期待できます。

    ただし、ARB投与時には腎動脈狭窄の有無に注意が必要です。動脈が狭くなって血流が少なくなった腎臓にARBの輸出細動脈拡張作用が加わると、腎血流量がさらに低下します。

    そうすると尿が作りにくくなることに加え、低酸素に弱い腎細胞がダメージを受け腎機能が急速に低下する恐れがあるからです。

    ■心保護作用

    アンジオテンシンⅡは血管収縮を起こすだけでなく、心筋細胞の肥大・線維化を促進し、心筋リモデリングを引き起こします。

    心不全患者の脳は血流が足りないと勘違いし、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン(RAA)系を活性化し、血液に水分とNaをため込むことで、心臓への負担を増加させることになります。

    ARBのアンジオテンシンⅡ受容体阻害作用は間接的にアルドステロン分泌を抑え心筋リモデリングを防ぎます。つまりARBは心臓を守る降圧薬としての側面を持っているのです。

    ARBの降圧作用には「速効性作用」と「遅効性作用」の2つがあります。

    ■速効性作用

    投与初期からARBはアンジオテンシンⅡ受容体(AT₁受容体)阻害作用により、血管収縮を抑制し血圧低下が起こります。

    ■遅効性作用

    アンジオテンシンⅡはアルドステロン分泌促進を起こします。アルドステロンは腎臓で水とNaの再吸収を増加させ、体液量を増やすことで血圧が上がります。

    ARBのアルドステロン作用抑制により体液量の調整がゆっくりと進み、安定した降圧効果の発揮には数日〜2週間程度かかることが多いのです。

    つまり、「血管拡張による即効性作用」と「体液量調整による遅効性作用」の両方があるので、ARBは開始後すぐに血圧は下がり始めますが、「安定して下がる」には2週間ほどかかるという説明がより的を得ているて言えるでしょう。


    腎動脈狭窄がある場合はARBの使用は注意が必要と書きましたが、薬局で腎動脈狭窄の有無を確認することは簡単ではありません。

    腎動脈狭窄の所見は、原因不明の重度高血圧や、左右の腎臓の大きさの差、または肺水腫などです。これらがある場合に検査が行われ、超音波やCT、MRI、腎動脈造影検査などの画像検査で診断を行うからです。

    薬局薬剤師が注意すべき事としては、まずARBを開始する際には動脈硬化リスクのある方への経過観察です。
    糖尿病や脂質異常症等の病歴、高齢者や喫煙者のような患者背景に注視しましょう。
    さらに服用開始後には浮腫、倦怠感、乏尿が無いことを確認し、腎機能の検査値(eGFR、Cr、BUN、尿タンパク)に変化が無いかをチェックしましょう。

    今回はARBの特徴を整理しました。
    何年か前に先輩薬剤師からARBの特徴を教えてもらった過去があり、臓器保護作用や血圧が安定して下がる理由を改めて調べてみたかったからです。

    次に新規でARBが処方された患者さんには今回の学びを活かしたいですね。

  • 「はやり目」はどれくらい感染力が強い?治療や登校・出勤の目安を薬剤師がわかりやすく解説!

    「はやり目」はどれくらい感染力が強い?治療や登校・出勤の目安を薬剤師がわかりやすく解説!

    目が真っ赤に充血して、涙や目やにが止まらない。

    そんな症状が出て、はやり目と診断されたことがある人もいるかもしれません。

    はやり目は、正式には「流行性角結膜炎」と呼ばれるウイルス感染症です。

    非常に感染力が強く、家庭内や学校、職場などであっという間に広がることも。

    今回は薬剤師の視点から、はやり目を解説していきます。

    はやり目は、全年齢で発症する可能性はありますが、特に多いのは、幼児〜小学生、そして職場や介護施設などで人と接する機会の多い成人です。

    接触感染で広がりやすく、学校や職場での集団感染がしばしば見られます。

    季節的には、夏〜秋にかけて流行しやすい傾向があります。

    プールやタオルの共用などで感染が広がりやすくなるためです。

    ■ 原因

    原因は「アデノウイルス8型、19型、37型」など。

    同じアデノウイルスでも、風邪や咽頭結膜熱(プール熱)とは型が異なります。

    ■ 症状

    • 白目の充血(結膜炎)
    • 涙や目やにの増加
    • まぶたの腫れ
    • まぶしさ(羞明)
    • 目の痛みやゴロゴロ感

    多くの場合、片目から始まり、数日後にもう片方の目にも感染します。

    アレルギー性結膜炎に比べ、かゆみは少ないです。

    症状は軽度なら数日から1週間、長引いても2~3週間で治ることが多いですが、重症の場合は角膜(黒目の部分)に白い濁りが残ることもあります。これを「角膜混濁」といい、視力が一時的に低下することもあります。

    アデノウイルスに直接効く抗ウイルス薬はありません。

    そのため、治療の目的は「症状を和らげること」と「感染拡大を防ぐこと」です。

    主に使用されるのは以下のような薬です。

    薬の種類主な目的具体例
    抗菌薬点眼細菌の二次感染を防ぐレボフロキサシン点眼など
    ステロイド点眼炎症や充血を抑えるフルオロメトロン点眼など
    人工涙液乾燥や異物感の軽減ヒアレイン点眼など
    ヨード剤点眼消毒が効果的な場合もあるサンヨード点眼など

    ※ステロイド点眼は、医師の指示のもとで短期間のみ使用します。自己判断で中止しないよう注意が必要です。

    はやり目は、ウイルスが目や手指、タオルなどを介して感染します。そのため、家庭内感染を防ぐには次の対策が重要です。

    • 石けんでこまめに手洗い
    • 目を触らない、こすらない
    • タオルや枕カバー、洗顔タオルを家族と共有しない
    • 点眼薬をほかの人と共用しない
    • ドアノブやスイッチなどをアルコールや次亜塩素酸で拭く
    • 感染した人は最後にお風呂に入るようにする


    また、アデノウイルスは水中、衣類、床やテーブルの上などの環境中でも数日から数週間生存するため、掃除もこまめに行いましょう。

    アデノウィルスはアルコール消毒が効きづらく、次亜塩素酸ナトリウムを含む消毒剤が有効なので、ミルトンやキッチンハイターを使うと良いでしょう。

    ・症状が強いときは、無理に外出せず休養をとりましょう。

    ・洗顔後は清潔なタオルでやさしく拭き取ること。

    ・コンタクトレンズは中止し、症状が治まるまで再装着は避けます。

    ■登園・出勤の可否

    アデノウィルスによる流行性角結膜炎(はやり目)は感染症法で第5類感染症に指定され、学校保健安全法で出席停止が定められた感染症です。

    登園や登校の再開は、医師が「感染力がなくなった」と判断してからが原則です。

    法律上は仕事を休む決まりはありませんが、感染力が強いのでお仕事をしている方は会社の就業規則を確認しましょう。

    これらの疾患はアデノウイルスが原因ですが、型が異なります。

    疾患名主な原因ウイルス主な症状発熱
    流行性角結膜炎(はやり目)アデノウィルス8、19、37型など目の充血、涙、腫れほとんどなし
    咽頭結膜熱(プール熱)アデノウィルス3、7型など目の充血+咽頭痛あり(38〜39℃)
    胃腸炎アデノウィルス31、40、41型など下痢、嘔吐、腹痛あり(37~38℃)まれに39℃以上

    アデノウィルスには50種類以上の型があり、風邪や肺炎などを起こす場合もあります。

    流行性角結膜炎(はやり目)は、アデノウイルスによる非常に感染力の強い目の病気です。

    特効薬はありませんが、清潔を保ち、拡散を防ぐことで自然に治癒します。

    家庭内感染を防ぎながら、目を休め、医師の指示に従って適切に点眼治療を行いましょう。