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  • 【横紋筋融解症とは?薬剤師がわかりやすく解説】

    横紋筋融解症(おうもんきんゆうかいしょう)は、

    筋肉が壊れて中の成分(ミオグロビンなど)が血液中に流れ出てしまう危険な副作用です。

    早めに気づけば治療できる一方、

    放置すると腎不全を引き起こすことがあり、命にも関わります。

    ここでは、薬剤師として気になるポイントをまとめます。

    ■ 身体症状

    • 筋肉痛・筋肉のこわばり(特に太もも・ふくらはぎ・肩などの大きな筋肉で起こりやすい)
    • 筋力低下(力が入りにくい)
    • 尿の色が濃い・コーラのような赤褐色の尿
    • むくみ

    ■ 体調変化

    • 強いだるさ
    • 発熱
    • 吐き気
    • 動悸・息切れ(重症例)

    ■ 検査値の異常

    • クレアチンキナーゼ(CK、CPK)の大幅上昇
      骨格筋の破壊が原因です。正常値のおよそ5倍以上の1,000U/L以上で筋障害を疑い、5,000U/L以上で重症レベル、超重症例では100,000U/Lを超えることもあります。
    • ミオグロビン上昇
      赤褐色尿の原因はミオグロビン尿によるものです。筋肉から漏れ出したタンパク質が原因で、血液中ミオグロビンがおよそ1.5mg/dl以上は、他の項目と併せて診断の目安の1つとなります。
    • 尿素窒素(BUN)、クレアチニン上昇(Cr)
      腎機能の低下を示します。筋肉の破壊によって生じた物質が腎臓の負担となるためです。輸液による水分補給、原因薬剤の中止、腎機能が著しく低下した場合は血液透析などの適切な治療を行えば元の健康な腎機能に戻る可能性があります。

    この他にも高K血症、低Ca血症、高P血症等の電解質異常や、ASTやLDH等の肝機能に関する検査値も上昇します。

    ■ どのタイミングで症状を感じやすいか

    • 薬を飲み始めて数日〜数週間以内に出ることが多い
    • 運動量が急に増えた後
    • 脱水状態(夏場・発熱)で悪化しやすい

    ただし、スタチン系による横紋筋融解症は服用開始から数か月後に徐々に発症するケースがあるので、しばらくは注意が必要です。

    ■ スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)

    • アトルバスタチン
    • シンバスタチン
    • ロスバスタチン
    • プラバスタチン

    スタチン系の中でもプラバスタチンやロスバスタチンのような水溶性の薬は、脂溶性の薬よりも筋肉への移行が少ないので、比較的横紋筋融解症が起こる可能性は低いと言われています。

    ■ フィブラート系

    • フェノフィブラート
    • ベザフィブラート

    フィブラート系単独でも横紋筋融解症リスクがありますが、スタチン系との併用時にさらにリスクが高くなることが知られています。

    ■ その他

    • エゼチミブ
    • 抗精神病薬
    • 抗うつ薬
    • 抗菌薬(キノロン系など)
    • 抗てんかん薬

    頻度は薬により大きく異なり、すべてに当てはまるわけではありませんが、この項目の一部の薬で横紋筋融解症の可能性があります。

      横紋筋融解症の原因薬ごとに共通・確定した機序はまだありません。

    ただ、薬ごとに有力とされる推定メカニズムが存在しているので、あえてふれておきます。



    ■スタチン系

    スタチン系は筋肉のエネルギー産生に関するミトコンドリアの機能も阻害します。
    それにより筋肉へのエネルギー供給が減少することで、筋細胞が損傷してしまいます。
    さらにその損傷が深刻になると横紋筋融解症に発展してしまうと考えられています。

    ■フィブラート系

    フィブラート系もミトコンドリア障害や代謝異常が推定されていますが確立はされていません。

    ■ その他

    頻度は薬の種類により大きく異なりますが、スタチン+相互作用薬の併用時は注意が必要です。

    特にエゼチミブ単独では横紋筋融解症は極めて稀で、スタチンとの併用時の症例報告が中心です。

    他にも抗精神病薬、抗うつ薬、キノロン系等の抗菌薬、抗てんかん薬ではいずれも単一の確立した機序があるわけではなく、複数の要因が重なった場合(脱水、電解質異常、免疫反応、悪性症候群、セロトニン症候群、高アンモニア血症等)を介して横紋筋融解症が起こるのではないかと考えられています。

    ■ 薬物相互作用

    数年前にはフィブラート系はスタチン系と「原則併用禁忌」でしたが、見直されて「併用注意」となっています。併用により横紋筋融解症リスクは上がるので注意が必要です。

    他の薬がスタチンの代謝酵素(CYP3A4など)を阻害すると血中濃度が上昇し、リスク増加します。
    複数のスタチン系薬に対してクラリスロマイシンは併用注意、シクロスポリンは併用注意もしくは併用禁忌があります。

    他にもアゾール系抗真菌薬や抗HIV薬等のCYP3A4阻害作用に注意が必要です。

    ■ 食べ物・生活習慣の影響

    • グレープフルーツジュース→CYP3A4代謝阻害で濃度上昇
    • 激しい運動 → 筋細胞の破壊を助長
      過度のトレーニングによるオーバーワークや脱水は横紋筋融解症の原因となる可能性があります。
    • 脱水(発熱・下痢・大量の汗) → 腎障害のリスク増、熱中症に注意

    ■ 年齢・体質

    • 高齢者(筋肉量が少なく代謝が低下)
    • 低体重・栄養不足


    ■ 基礎疾患

    • 腎機能低下
      腎機能低下者は横紋筋融解症を起こすと急性腎不全のリスクが非常に高く、重症化しやすい傾向にあります。
    • 肝機能障害
    • 甲状腺機能低下症(潜在性も含む)
      スタチン筋症と甲状腺機能低下症は、どちらも筋力低下、筋痛、疲労感などの症状を引き起こす可能性があり、併発すると症状が強まることがあります

    • 急性腎不全(最も重大)
    • 高カリウム血症による不整脈
    • 慢性腎臓病
    • 重症化すれば命の危険も

    すぐに治療すれば後遺症なく回復するケースが多いです。

    横紋筋融解症そのものよりも、腎障害や電解質異常が命に関わるため、早期対応が最重要です。

    ■ 受診の目安

    • 筋肉痛やしびれがある
    • 赤褐色尿がある
    • 脱力感

    上記の症状があり横紋筋融解症が疑われる場合は、すぐに内科や腎臓内科を受診してください。

    さらに意識障害、38.5℃以上の高熱、呼吸困難、胸痛があれば救急受診しましょう。

    ■ 生活習慣アドバイス

    • 水分をしっかり取る
    • 急な無理な運動を避ける
    • 発熱・脱水時は医師に相談


    ■ 薬の中止について

    • 自己判断で中止しないこと
    • 医師が必要と判断した場合は、スタチンの種類変更や減量を行う

    横紋筋融解症が疑われるとき、CK(クレアチンキナーゼ)の数値が重要な判断材料 になります。

    筋肉のトラブルがあっても、CKが軽度上昇(目安:500 U/L 前後)で、症状が軽い場合は、薬を続けながら経過をみることが多いとされています。

    一方で、CKが1,000 U/L を超える場合、または基準値の 10倍以上の上昇がある場合 は、

    各種ガイドラインや総説でも「原因となる薬剤の中止、減量、または他剤への切り替えを検討する」ことが推奨されます。

    これは、CKの大幅な上昇が腎障害のリスクを高めること、横紋筋融解症に進展しやすいため早期介入が重要なことが理由とされています。

    ただ、CK値だけで判断せず、「症状の有無」、「尿の色」、「腎機能」を総合的に評価する事が重要です。

  • 夏に多い「とびひ(伝染性膿痂疹)」とは? 薬剤師が原因、治療、家庭での注意点をわかりやすく解説

    夏になると、子どもの肌にポツポツとできる水ぶくれ。
    「虫刺されかと思ったら、かさぶたになって広がってきた…」
    それ、もしかするととびひ(伝染性膿痂疹)かもしれません。
    今回は、薬剤師の視点からとびひの原因・症状・治療・家庭での注意点をわかりやすくまとめます。

    • 主に乳幼児〜小学生が多い(特に2〜6歳)、プールでの集団感染の報告もある
    • 皮膚が薄く、汗やかゆみによるかきむしり行動が多いことが原因
    • 夏の高温多湿環境で菌が増殖しやすい
    • まれに高齢者や糖尿病患者でも発症(免疫低下時)

    とびひは患部を触った手や指を介して接触感染します。

    水ぶくれやただれから出る浸出液の中に原因菌が存在し、それらが広がっていくためで、感染力が高いのも特徴の一つです。

    健康な皮膚であれば感染リスクは低いのですが、湿疹、アトピー、虫刺され、傷、あせも、皮膚乾燥などがあると感染リスクが高くなります。

    また、鼻の中には原因菌が常在しているので、小鼻や口まわりに傷があると感染しやすくなります。

    鼻をほじる事でも、その手から他の部位や傷口に原因菌が広がることもあります。

    兄弟で感染しあう事もあるので、環境や生活習慣にも注意が必要かもしれません。

    ■症状

    • 水ぶくれ(水疱)やかさぶた(痂皮)ができる
    • かゆみ・痛みを伴い、掻くと周囲に広がる
    • 顔・手足・体幹などに多く見られる
    • 重症例では発熱やリンパ節の腫れを伴うことも

    ■原因菌

    • 黄色ブドウ球菌:水ぶくれができる「水疱性膿痂疹」
    • A群β溶血性レンサ球菌:かさぶたになる「痂皮性膿痂疹」

    どちらも人の皮膚や鼻腔に常在する菌です。

    かき壊しなどの傷口から入り込み、炎症や感染を起こします。

    ■検査と診断

    多くの場合は見た目の症状で診断されます。

    再発や重症例では、膿から細菌を培養して原因菌を特定することもあります。

    予後

    適切な治療を行えば、1週間程度で治癒します。

    ただし、溶連菌型では急性糸球体腎炎の合併に注意が必要です。

    外用抗菌薬(軽症〜中等症)

    近年ではゲンタマイシンに原因菌が耐性を示し、無効であることがあります。

    感染範囲が狭い場合等は、下記の様な抗菌薬の塗り薬が中心で治療を行っていきます。

    • フシジン酸ナトリウム(フシジンレオ軟膏)
    • ナジフロキサシン(アクアチム軟膏)
    • テトラサイクリン(アクロマイシン軟膏)

    患部を石けんでやさしく洗いシャワーで洗い流した後に、外用薬を塗ってください。

    かさぶたの下にも菌が残っているため、清潔を保つことが重要です。

    塗り薬を塗って、さらにガーゼで保護するのが基本です。

    感染が広がっている場合や、集団感染を防ぐ目的で抗生物質の内服を行います。

    原因菌によって下記の様なセフェム系、ペニシリン系、ペネム系などが選択されます。

    • セファレキシン(ケフレックス)
    • セフカペンピボキシル(フロモックス)
    • アモキシシリン(サワシリン)
    • ファロペネム(ファロム)

    黄色ブドウ球菌が原因である場合はセフェム系が第一選択となりますが、溶連菌ではペニシリン系が第一選択となります。

    3~4日間抗菌薬を内服しても効果が無く、耐性菌(MRSA)が疑われる場合は、耐性のない抗菌薬に変更を検討します。

    かゆみ対策(補助療法)

    • かゆみが強い場合は抗ヒスタミン薬(アレグラ、ザイザルなど)でかきむしり防止。
    • 皮膚を傷つけないことが治癒の早道です。


    清潔を保つ

    • 1日1回は石けんで幹部をやさしく洗う
    • 泡で包み込むように洗い、強くこすらない
    • 患部が水やお湯で濡れるのは問題ないが、湯舟は細菌が繁殖しやすいので、シャワーが望ましい。

    ■感染予防のために

    • 手や皮膚を手洗いやシャワーなどで清潔に保つ
    • 傷口は洗って、ガーゼなどで保護する
    • 爪を短く切り、ひっかいて皮膚を傷つけないようにする
    • 症状が悪化したり、とびひが広がることを防ぐために触ったり掻いたりしない
    • タオルや衣類は感染者と共用しない

    入浴時やプールでは、水を介して感染する事はありません。

    しかし感染者との入浴は接触感染する可能性があるので、感染時は兄弟別々に入浴しましょう。

    プールは他者への感染リスクと症状悪化も考えられるので、とびひの症状が治まるまではお休みするようにしましょう。


    とびひは、火の粉が飛ぶようにあっという間に広がる様子から、その俗称となりました。

    保育園では暖かい時期に感染が流行する事もありますし、兄弟間での感染や二次感染も多いです。

    特に梅雨時期から夏場にかけては皮膚科は混みあう事が多いので、早い時間帯に病院へ行ったり、予約をしてから行く事もおすすめします。

  • 「ピリン系アレルギーとは? “〇〇ピリン”に隠れた薬の正体を薬剤師が解説」

    患者さんにお薬の副作用歴を聞いたとき、

    「ピリン系アレルギーなんです」と言われた経験はないでしょうか?

    薬剤師であれば一度は耳にする言葉ですが、

    実際に「ピリン系」とはどんな薬を指すのか、そしてどんな副作用に注意すべきか、

    近年では調剤・服薬指導の機会が少ないため、正しく理解している人は意外と少ないかもしれません。

    この記事では、ピリン系薬剤の特徴から副作用、

    そして近年の使用状況までを整理してみます。

    ピリン系薬剤とは、ピラゾロン骨格という化学構造をもつ薬の総称です。

    代表的なのは以下のような成分です。

    • アンチピリン
    • アミノピリン
    • イソプロピルアンチピリン
    • スルピリン

    薬理作用としては、プロスタグランジンの生成を抑えることで、発熱や痛みを和らげる点が特徴です。

    ピリン系薬剤は脳内の体温調節中枢や痛みの伝達経路といった中枢神経系への作用が優れており、強い解熱・鎮痛作用を発揮します。

    ピリン系薬剤は、かつては解熱鎮痛剤として広く使われていましたが、現在では使用頻度が大きく減少しています。

    その理由は主に以下の3点です。

    1. 重篤な副作用の報告(特に無顆粒球症)
    2. アレルギー反応の頻度の高さ
    3. 安全性の高いNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の普及

    無顆粒球症は確率こそ低いのですが、

    発症することで白血球の一種である顆粒球(好中球)が著しく減少し、

    発熱・咽頭痛から敗血症へ進行することがあり、命に関わるリスクとして問題視されました。

    その他にも軽微なものから重篤な、アレルギーや副作用などの可能性もあります。

    ■主な副作用

    • 無顆粒球症
    • 再生不良性貧血
    • 発疹(ピリン疹)
    • ショック
    • 皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症

    これらは免疫・造血系への影響が主因で、

    特に過去に何かしらの薬が原因で薬疹などのアレルギーを起こしたことがある人、

    多剤服用中の高齢者ではリスクが高くなります。

    近年は減ったとはいえ、以下の薬剤は今でも処方を受け付ける事が稀にあります。

    • SG配合顆粒
    • クリアミン配合錠

    上記2剤はどちらもイソプロピルアンチピリンを含んでいます。

    昔から使っていて副作用歴がなく、他の解熱鎮痛剤では効果が低い方に処方されることもあります。

    市販薬では、一部の総合感冒薬や鎮痛薬にイソプロピルアンチピリンが含まれていることがありますが、その種類は意外と多いので注意が必要です。

    ■イソプロピルアンチピリンを含む一般用医薬品

    • セデス・ハイ
    • セデス・ハイG
    • サリドンA
    • タイムコールP錠
    • パイロンハイEX
    • エザックエース

    消費者自身が成分を見て判断するのは難しいため、

    薬剤師が「ピリン系アレルギーの既往がある人には成分確認を行う」ことが大切です。

    「ピリン系」とは、ピラゾロン骨格を持つ解熱鎮痛薬群を指す名称です。

    発熱や痛みを抑える効果がある一方で、重い副作用に注意が必要です。

    また、ピリン系薬剤はイソプロピルアンチピリンのように薬品名の最後に「ピリン」と付くのが特徴ですが一部に例外もあります。

    たとえば、バイアスピリン(アスピリン)は「サリチル酸系」であり、ピリン系とはまったく別の分類に入ります。

    現在は使われることが少なくなったとはいえ、医療従事者や副作用歴がある方は、ピリン系薬剤に関するある程度の知識は備えていた方がいいかもしれません。

  • ARBの『臓器保護作用』と『血圧が安定して低下するのに時間がかかる理由』

    高血圧の治療では高い降圧力と即効性に加え、一部には狭心症にも有効なCa拮抗薬がよく処方されるというイメージを持っている方も多いかと思います。

    逆にARBは比較的ゆっくりと降圧作用を発揮し、心不全に有効というところでしょうか。

    今回はARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)の特徴を2つの観点から深掘りしてみました。

    ARBの特徴として、血圧を下げる降圧作用に加えて、臓器保護作用(腎保護作用・心保護作用)があります。

    ■腎保護作用

    ARBは、腎臓の輸出細動脈を拡張させて糸球体内圧を下げ、糸球体の過剰なろ過を防ぐことで尿タンパクが減少します。実は尿タンパクが出ていること自体が腎臓への負担となります。

    さらに糸球体硬化の進行による腎機能低下を抑制させる効果も期待できます。

    ただし、ARB投与時には腎動脈狭窄の有無に注意が必要です。動脈が狭くなって血流が少なくなった腎臓にARBの輸出細動脈拡張作用が加わると、腎血流量がさらに低下します。

    そうすると尿が作りにくくなることに加え、低酸素に弱い腎細胞がダメージを受け腎機能が急速に低下する恐れがあるからです。

    ■心保護作用

    アンジオテンシンⅡは血管収縮を起こすだけでなく、心筋細胞の肥大・線維化を促進し、心筋リモデリングを引き起こします。

    心不全患者の脳は血流が足りないと勘違いし、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン(RAA)系を活性化し、血液に水分とNaをため込むことで、心臓への負担を増加させることになります。

    ARBのアンジオテンシンⅡ受容体阻害作用は間接的にアルドステロン分泌を抑え心筋リモデリングを防ぎます。つまりARBは心臓を守る降圧薬としての側面を持っているのです。

    ARBの降圧作用には「速効性作用」と「遅効性作用」の2つがあります。

    ■速効性作用

    投与初期からARBはアンジオテンシンⅡ受容体(AT₁受容体)阻害作用により、血管収縮を抑制し血圧低下が起こります。

    ■遅効性作用

    アンジオテンシンⅡはアルドステロン分泌促進を起こします。アルドステロンは腎臓で水とNaの再吸収を増加させ、体液量を増やすことで血圧が上がります。

    ARBのアルドステロン作用抑制により体液量の調整がゆっくりと進み、安定した降圧効果の発揮には数日〜2週間程度かかることが多いのです。

    つまり、「血管拡張による即効性作用」と「体液量調整による遅効性作用」の両方があるので、ARBは開始後すぐに血圧は下がり始めますが、「安定して下がる」には2週間ほどかかるという説明がより的を得ているて言えるでしょう。


    腎動脈狭窄がある場合はARBの使用は注意が必要と書きましたが、薬局で腎動脈狭窄の有無を確認することは簡単ではありません。

    腎動脈狭窄の所見は、原因不明の重度高血圧や、左右の腎臓の大きさの差、または肺水腫などです。これらがある場合に検査が行われ、超音波やCT、MRI、腎動脈造影検査などの画像検査で診断を行うからです。

    薬局薬剤師が注意すべき事としては、まずARBを開始する際には動脈硬化リスクのある方への経過観察です。
    糖尿病や脂質異常症等の病歴、高齢者や喫煙者のような患者背景に注視しましょう。
    さらに服用開始後には浮腫、倦怠感、乏尿が無いことを確認し、腎機能の検査値(eGFR、Cr、BUN、尿タンパク)に変化が無いかをチェックしましょう。

    今回はARBの特徴を整理しました。
    何年か前に先輩薬剤師からARBの特徴を教えてもらった過去があり、臓器保護作用や血圧が安定して下がる理由を改めて調べてみたかったからです。

    次に新規でARBが処方された患者さんには今回の学びを活かしたいですね。

  • 「はやり目」はどれくらい感染力が強い?治療や登校・出勤の目安を薬剤師がわかりやすく解説!

    目が真っ赤に充血して、涙や目やにが止まらない。

    そんな症状が出て、はやり目と診断されたことがある人もいるかもしれません。

    はやり目は、正式には「流行性角結膜炎」と呼ばれるウイルス感染症です。

    非常に感染力が強く、家庭内や学校、職場などであっという間に広がることも。

    今回は薬剤師の視点から、はやり目を解説していきます。

    はやり目は、全年齢で発症する可能性はありますが、特に多いのは、幼児〜小学生、そして職場や介護施設などで人と接する機会の多い成人です。

    接触感染で広がりやすく、学校や職場での集団感染がしばしば見られます。

    季節的には、夏〜秋にかけて流行しやすい傾向があります。

    プールやタオルの共用などで感染が広がりやすくなるためです。

    ■ 原因

    原因は「アデノウイルス8型、19型、37型」など。

    同じアデノウイルスでも、風邪や咽頭結膜熱(プール熱)とは型が異なります。

    ■ 症状

    • 白目の充血(結膜炎)
    • 涙や目やにの増加
    • まぶたの腫れ
    • まぶしさ(羞明)
    • 目の痛みやゴロゴロ感

    多くの場合、片目から始まり、数日後にもう片方の目にも感染します。

    アレルギー性結膜炎に比べ、かゆみは少ないです。

    症状は軽度なら数日から1週間、長引いても2~3週間で治ることが多いですが、重症の場合は角膜(黒目の部分)に白い濁りが残ることもあります。これを「角膜混濁」といい、視力が一時的に低下することもあります。

    アデノウイルスに直接効く抗ウイルス薬はありません。

    そのため、治療の目的は「症状を和らげること」と「感染拡大を防ぐこと」です。

    主に使用されるのは以下のような薬です。

    薬の種類主な目的具体例
    抗菌薬点眼細菌の二次感染を防ぐレボフロキサシン点眼など
    ステロイド点眼炎症や充血を抑えるフルオロメトロン点眼など
    人工涙液乾燥や異物感の軽減ヒアレイン点眼など
    ヨード剤点眼消毒が効果的な場合もあるサンヨード点眼など

    ※ステロイド点眼は、医師の指示のもとで短期間のみ使用します。自己判断で中止しないよう注意が必要です。

    はやり目は、ウイルスが目や手指、タオルなどを介して感染します。そのため、家庭内感染を防ぐには次の対策が重要です。

    • 石けんでこまめに手洗い
    • 目を触らない、こすらない
    • タオルや枕カバー、洗顔タオルを家族と共有しない
    • 点眼薬をほかの人と共用しない
    • ドアノブやスイッチなどをアルコールや次亜塩素酸で拭く
    • 感染した人は最後にお風呂に入るようにする


    また、アデノウイルスは水中、衣類、床やテーブルの上などの環境中でも数日から数週間生存するため、掃除もこまめに行いましょう。

    アデノウィルスはアルコール消毒が効きづらく、次亜塩素酸ナトリウムを含む消毒剤が有効なので、ミルトンやキッチンハイターを使うと良いでしょう。

    ・症状が強いときは、無理に外出せず休養をとりましょう。

    ・洗顔後は清潔なタオルでやさしく拭き取ること。

    ・コンタクトレンズは中止し、症状が治まるまで再装着は避けます。

    ■登園・出勤の可否

    アデノウィルスによる流行性角結膜炎(はやり目)は感染症法で第5類感染症に指定され、学校保健安全法で出席停止が定められた感染症です。

    登園や登校の再開は、医師が「感染力がなくなった」と判断してからが原則です。

    法律上は仕事を休む決まりはありませんが、感染力が強いのでお仕事をしている方は会社の就業規則を確認しましょう。

    これらの疾患はアデノウイルスが原因ですが、型が異なります。

    疾患名主な原因ウイルス主な症状発熱
    流行性角結膜炎(はやり目)アデノウィルス8、19、37型など目の充血、涙、腫れほとんどなし
    咽頭結膜熱(プール熱)アデノウィルス3、7型など目の充血+咽頭痛あり(38〜39℃)
    胃腸炎アデノウィルス31、40、41型など下痢、嘔吐、腹痛あり(37~38℃)まれに39℃以上

    アデノウィルスには50種類以上の型があり、風邪や肺炎などを起こす場合もあります。

    流行性角結膜炎(はやり目)は、アデノウイルスによる非常に感染力の強い目の病気です。

    特効薬はありませんが、清潔を保ち、拡散を防ぐことで自然に治癒します。

    家庭内感染を防ぎながら、目を休め、医師の指示に従って適切に点眼治療を行いましょう。

  • カレーだけじゃない!薬剤師が解説する“ウェルシュ菌”の意外な危険と予防法

    皆さんは、カレーを翌日に温め直して食べることはありますか?

    あの熟成された翌日のカレー、最高ですよね。

    でも実はカレーやシチューは、**食中毒の原因となる「ウェルシュ菌」**が繁殖しやすい代表的な料理と言われています。

    しかし、注意すべきなのはカレーやシチューだけなのでしょうか?

    ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)は、クロストリジウム属に属する嫌気性グラム陽性桿菌です。

    嫌気性なので空気の少ない環境を好んで増殖します。特徴としては・・・

    • 芽胞(バリアのような殻)を作って熱や乾燥に強い
    • 私たちの腸内にも腸内細菌叢の構成菌として常在していることが多い(少量なら無害)
    • 土壌や下水、河川や海、ほこりなど環境中に広く存在し、肉や野菜にも付着している


    つまり「どこにでもいる菌」で、調理の過程で完全に除去するのは難しい菌なんです。

    ウェルシュ菌は芽胞を作ると、滅菌には100℃で6時間以上加熱しなければいけません。一般的な調理での加熱消毒は難しいでしょう。

    調理後に温度が下がる過程で急速に増殖します。


    ■繁殖しやすい条件は・・・

    • 温度:45〜50℃前後で最も活発
    • 環境:酸素がなかなか行き届かない粘性が高い料理(カレー、シチューなど)
    • 放置時間:2時間以上“ぬるい温度”が続くと急増


    ■ウェルシュ菌による食中毒の症状

    • 食後6〜18時間で発症
    • 主な症状:下痢・腹痛(発熱・嘔吐は少ない)
    • 多くは1〜2日で回復しますが、乳幼児や高齢者では重症化のリスクもあります。

    ■治療

    特効薬はなく、脱水に対する水分補給や整腸剤による対症療法が中心です。


    • 調理後は2時間以内に料理の中心部まで冷却
    • 小分けして浅い容器に移す(熱が逃げやすい)
    • 冷蔵庫に入れる前に氷水などで粗熱を取る
    • 食べるときは75℃以上で1分間再加熱

    ポイントは「冷ますスピード」と「再加熱」です。

    カレーなどを「夜に作って朝まで鍋のまま放置」すると、菌が増えやすくなります。

    再加熱では、芽胞を形成したウェルシュ菌は生き残りますが、芽胞を形成していないものや一部の毒素は除去することができます。

    • とろみや油分で熱がこもりやすく、冷めにくい
    • 大鍋だと冷蔵庫に入れても中心部まで冷えるのに時間がかかる
    • 空気が入りにくい“嫌気的”環境
    • カレーやシチューに含まれるタンパク質等はウェルシュ菌繁殖の栄養源となる

    これらが、まさにウェルシュ菌にとって理想の環境なんです。

    他の料理でも注意するべきです。

    以下のような料理もリスクがあります。

    料理名理由
    味噌汁具が多く、大鍋は冷めにくい
    ミートソース・煮物粘度が高く酸素が少ない
    スープカレー・ボロネーゼとろみ+肉汁+栄養で菌が生き残りやすい

    特に大量調理や作り置きでは注意が必要です。

    おでんの継ぎ足しやうなぎの秘伝のタレも一見リスクが高そうですが、毎日しっかり加熱殺菌している場合や塩分濃度がウェルシュ菌繁殖に適さない場合は比較的安全とされています。

    ただし、加熱不足や途中で温度が下がる時間が長いと、

    やはり芽胞菌が残って増殖する可能性があります。

    老舗の店舗では「毎日必ず沸騰させる」「鍋を空にして洗浄後に再仕込み」など、厳格な衛生管理がされています。

    現代では保健所の衛生基準も厳しく、毎日すべてのだし汁を継ぎ足すようなリスクが高い事をするお店があるとは考えずらいですね。

    • ウェルシュ菌は「どこにでもいる」嫌気性の芽胞形成菌
    • 40〜50℃で長時間放置すると爆発的に増殖
    • カレーやシチューは特に注意!
    • 予防は「小分け・急冷・再加熱」が基本
    • 継ぎ足し料理も加熱管理が重要

    古くなった食品の匂いを確認した後に、「大丈夫!!」と言って食べてしまう人もいます。犬じゃないんだからね(笑)

    ただ、ウェルシュ菌が増殖してしまった食べ物は、匂いや見た目ではほとんど判断できないので、作り置きをする場合は温度・衛生管理に注意しましょう。

  • 【薬剤師が解説】飲酒のメリット・デメリット 〜楽しくお酒と付き合うために〜

    皆さん、お酒は好きですか?

    私も人並みにお酒が好きで、仕事終わりに軽く晩酌をするのが日課になっています。

    お酒を飲む時間はリラックスできて、食事もおいしく感じられるひとときですよね。

    ただ、薬剤師として日々患者さんと接していると、「飲みすぎて体調を崩した」「薬と一緒に飲んでしまった」など、飲酒にまつわるトラブルも少なくありません。

    今日は、**薬剤師の視点から見た「飲酒のメリットとデメリット」**をわかりやすく整理してみたいと思います。

    ① 心身のリラックス効果・食事の楽しみ

    適度な飲酒はリラックス効果をもたらします。

    また、アルコールが中枢神経を軽く抑制することで緊張がほぐれ、会話や食事の時間がより楽しく感じられます。

    ② 血流改善・末梢血管拡張作用

    アルコールには末梢血管を拡張する作用があり、一時的に血流を改善します。

    そのため、体が温まったように感じるのはこの作用によるものです。

    ③ HDL(善玉)コレステロールの増加

    少量の飲酒はHDLコレステロールを増やし、動脈硬化を抑える可能性があると報告されています。

    ただし、「少量」がポイントで、過剰摂取は逆効果になります。

    ④ コミュニケーションの潤滑油

    適度な飲酒は、緊張を和らげ、会話をスムーズにしてくれます。

    仕事の場や家庭での交流を深めるきっかけになることもありますね。

    ① 肝臓への負担

    アルコールは肝臓で代謝されるため、過剰な飲酒は脂肪肝、肝炎、肝硬変へと進行するリスクを高めます。

    肝機能障害を持つ方や、肝臓で代謝される薬を服用している方は特に注意が必要です。

    ② 高血圧・心筋症・不整脈のリスク

    アルコールは交感神経を刺激し、血圧を上昇させます。

    慢性的な飲酒は、アルコール性心筋症や不整脈(特に心房細動)を引き起こす原因になることもあります。

    ③ 睡眠の質低下

    寝酒は寝つきを良くするように感じますが、実際はレム睡眠とノンレム睡眠のバランスが変化し、睡眠の質を悪化させます。

    結果として「夜中に目が覚めやすい」「翌朝疲れが取れない」といった症状が出やすくなります。

    ④ 脱水・電解質異常

    アルコールは抗利尿ホルモンであるバソプレシン(ADH)の分泌を抑えるため、尿量が増えます。

    水分やミネラルが失われ、脱水や電解質異常(特にNa・K・Mgの低下)を招くことがあります。脱水が進むと血液がドロドロになり、より血管や心臓に負担がかかります。

    ⑤ 薬との相互作用

    アルコールは多くの薬と相互作用します。

    睡眠薬、抗不安薬、抗ヒスタミン薬などは、アルコールと併用すると中枢神経抑制が強まり、転倒や意識障害のリスクが高まります。

    肝代謝系(CYP酵素)を介する薬物にも影響を与えるため、服薬中の方は特に注意が必要です。

    ⑥ 脳への影響・認知機能低下・依存

    慢性的な飲酒は脳細胞の萎縮を引き起こし、記憶力や判断力の低下につながります。

    また、脳内の報酬系に作用することで依存が形成されやすくなり、「やめたいのにやめられない」状態になることもあります。

    ⑦ 筋肉の分解

    アルコールは筋肉に関するホルモンにも影響します。筋肉を分解促進するコルチゾールを増やし、筋肉の成長を助けるテストステロンを減少させます。

    そのため、トレーニング直後の飲酒は筋肥大を妨げ、慢性的な飲酒は筋力低下の原因になります。

    お酒には、リラックス効果やコミュニケーションの促進など、良い面も確かにあります。

    しかし、健康面で見ればデメリットの方が多いのも事実です。

    それでも……つい飲んでしまうんですよね。

    芸能人がやらかしたニュースでもよく見ますが、人が何か失敗する時って結構な確率でお酒が絡むことも・・・

    私も皆さんも、飲みすぎには注意して、上手にお酒と付き合っていきましょうね。

  • 薬剤師ブログはじめます!!

    はじめまして!薬剤師の郷ツトム(HN)と申します!

    このたび、薬剤師ブログはじめることにしました!!

    私は薬剤師歴10年ほど。新卒からずっと薬局薬剤師として働いてきました。

    一般薬剤師→管理薬剤師を経験し、現在は複数店舗でエリアマネージャーとして勤務しながら、本社での業務や社員研修などにも携わっています。

    薬学生時代から私の心に刻まれた、薬剤師綱領・薬剤師行動規範のこの文言・・・

    薬剤師は、生涯にわたり知識と技能の水準を維持及び向上するよう研鑚するとともに、先人の業績に敬意を払い、また後進の育成に努める。

    私はこの言葉を薬剤師として働くうえで1つの軸としており、

    自身の学びや経験を、後輩薬剤師や薬学生に伝えながら働いています。

    このブログでは、薬剤師として調べたことや学んだことをわかりやすくまとめていこうと思っています。

    日々の業務で、

    「自分はこの薬や病気のこと深く理解できていないぞ」

    「この服薬指導は患者さんにどう伝えたら分かりやすいかな?」

    というような場面に出くわすこともしばしばです。

    スマホをポチポチしてすぐ疑問を解決できる事もあれば、

    書籍やガイドラインを見て深掘りする事が必要なこともあります。

    時には薬剤師同士が知識を共有しあう事で知識を深めることも!

    そうした日々の学びの積み重ねは、自分の薬剤師としてのスキルアップになっていると実感する事もあります。

    『知識を一つ身につけた!』この瞬間はドラクエのレベルが上がった時のような感覚ですよね(笑)

    ただ新しい知識を得ても、悲しいかな人間は忘れてしまう生き物でもあります。

    しかも医療は日進月歩で、新しい薬や情報も次々に出てきます。

    そこで、このブログはそんな“自分の学びの記録”にしつつも、

    会社や地域という枠にとらわれず、広い範囲で“誰かの役に立つ情報”にもなればいいな、という思いで始めてみました。

    基本は自分視点というか薬剤師視点でブログを書いていきますが、

    いろんな方に「なるほど」と思っていただけるように、できるだけ丁寧に書くように心がけます。

    薬剤師に限らず、医療介護に関わる方、薬の勉強をする学生の方、薬の事を知りたい一般の方などいろんな方に読んでいただきたいですし、読んでいただいた方に何らかの貢献が出来ればと思っています。

    最後まで読んでいただき、ありがとうございました! よろしくお願い致します!