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  • ステロイドで筋肉はつく?|プレドニンとアナボリックステロイドの違いを薬剤師が解説

    ステロイドで筋肉はつく?|プレドニンとアナボリックステロイドの違いを薬剤師が解説

    筋肉を大きくするために「ステロイドを使う」という話を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。

    一方で、病院ではプレドニンなどのステロイド薬が処方されています。

    そのため、「プレドニンを飲みながら筋トレをしたら筋肉が付きやすくなるのでは?」と思ったことがある方もいるかもしれません。

    しかし、ここには大きな誤解があります。

    筋肥大を目的として使われるステロイドと、病院で処方されるプレドニンは、同じ“ステロイド”でも作用は大きく異なります。

    今回は、プレドニンとアナボリックステロイドの違い、筋肥大のメカニズム、副作用について薬剤師が解説します。

    ①プレドニンで筋肉はつくのか?

    結論:筋肉はつかない

    むしろ長期間使用すると筋肉量が減少することもあります。

    ステロイドの定義

    ステロイドとは、ステロイド骨格(シクロペンタノヒドロフェナントレン環)を持つ物質の総称です。

    副腎皮質ホルモンや性ホルモンは、いずれもコレステロールから生合成されるステロイドホルモンです。

    つまり、「ステロイド」は薬の名前ではなく、共通した構造を持つ物質のグループ名です。

    プレドニンは何のステロイド?

    プレドニン(プレドニゾロン)は、副腎皮質ホルモンの一種である糖質コルチコイドに分類されます。

    強い抗炎症作用や免疫抑制作用を持ち、さまざまな疾患の治療に用いられます。

    • アレルギー
    • 自己免疫疾患
    • 炎症性疾患

    なぜ筋肉が減ることがあるのか

    糖質コルチコイドは、体内で糖新生を促進します。

    糖新生とは、アミノ酸などから新たにブドウ糖を作り出す仕組みです。

    その際、糖質コルチコイドは筋タンパク質の分解を促進し、放出されたアミノ酸を糖新生の材料として利用します。

    このため、プレドニン(プレドニゾロン)を飲みながら筋トレをしても、筋肥大を目的とした薬としては適していません。

    長期間・高用量で使用すると、ステロイドミオパチーと呼ばれる筋力低下や筋萎縮を生じることもあります。

    ではなぜ「筋肉がつくステロイド」が存在するのか?

    実はステロイドには複数の種類があり、筋肥大に関係するのはプレドニンとは別のステロイドです。

    次にその違いを見ていきましょう。

    ② 筋肥大に使われるステロイドとは?

    前項で解説したように、プレドニン(プレドニゾロン)は糖質コルチコイドであり、筋肉を増やす薬ではありません。

    では、筋肥大を目的として使われる「ステロイド」とは何なのでしょうか。

    まず知っておきたいのは、ステロイドにはさまざまな種類が存在するということです。

    副腎皮質ホルモンには、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドがあり、性ホルモンには、アンドロゲン、エストロゲン、プロゲステロンがあります。

    このうち、筋肥大に大きく関わるのがアンドロゲンです。

    筋肉を増やすのはアンドロゲン

    アンドロゲンとは男性ホルモンの総称で、その代表がテストステロンです。

    テストステロンは男性らしい体つきの形成に関与するだけでなく、筋肉や骨の発達を促進する作用を持っています。

    そのため、筋トレを行う人の間では「筋肉を増やすホルモン」としてよく知られています。

    つまり、筋肥大に関与するのはプレドニンのような糖質コルチコイドではなく、アンドロゲン系のステロイドなのです。

    アナボリックステロイドとは?

    アナボリックステロイド(蛋白同化ステロイド)は、テストステロンをもとに開発された薬剤です。

    筋肉を作る作用(タンパク同化作用)を強めるように構造が改変されており、筋肉や筋力の増加を目的として使用されることがあります。

    実際にアナボリックステロイドには筋肥大作用が存在します。

    しかし、その一方で重篤な副作用も報告されており、医療目的以外での使用には大きなリスクが伴います。

    では、アナボリックステロイドはどのような仕組みで筋肉を増やすのでしょうか。

    次に、その筋肥大のメカニズムについて見ていきます。

    ③筋肥大のメカニズム

    アナボリックステロイドはどうやって筋肉を大きくするのか

    アナボリックステロイドによる筋肥大は、単純に筋肉へ栄養を送り込むことで起こるわけではありません。

    筋細胞の中では、ホルモン受容体や遺伝子発現を介した複雑な仕組みが働いています。

    アナボリックステロイドは、まず筋細胞内のアンドロゲン受容体に結合します。

    活性化された受容体は細胞核へ移動し、筋タンパク合成に関わる遺伝子の発現を促進します。

    さらに、筋肥大の司令塔とも呼ばれるmTOR経路を活性化することで、筋タンパク合成を強力に促進します。mTORは細胞内で「筋肉を作れ」という指令を出す重要なシグナル経路です。

    また、アナボリックステロイドは衛星細胞(サテライトセル)の活性化にも関与すると考えられています。

    衛星細胞は筋線維の修復や成長を担う細胞であり、その活性化によって筋肥大が促進されます。

    このようにアナボリックステロイドは、筋タンパク合成の増加と衛星細胞の活性化を通じて、筋力増加や筋肥大をもたらします。

    なぜ筋肥大効果が強くなるのか

    通常の筋トレでも、筋肉に負荷が加わることでmTORが活性化し、筋タンパク合成が促進されます。

    一方、アナボリックステロイドを使用した場合は、生理的範囲を超える強いアンドロゲン受容体刺激が加わることで、筋タンパク合成がさらに促進されます。

    そのため、ナチュラルな状態と比べて筋肥大のスピードや筋量の増加幅が大きくなり、通常では到達が難しいレベルの筋肥大が起こることがあります。

    ④アナボリックステロイドの副作用

    筋肥大効果が強い一方で、アナボリックステロイドにはさまざまな副作用が報告されています。

    ホルモンバランスの乱れ

    アナボリックステロイドを外部から投与すると、体内では「十分な男性ホルモンが存在する」と判断されます。

    その結果、脳の視床下部や下垂体からのホルモン分泌が抑制され、自身のテストステロン産生が低下します。

    そのため、以下のような副作用が起こることがあります。

    ・精巣萎縮
    ・男性不妊
    ・性欲低下
    ・勃起機能の低下

    筋肉を大きくするために使用した結果、本来のホルモン機能に悪影響を及ぼす可能性があるのです。

    女性化乳房

    テストステロンの一部は体内でエストロゲン(女性ホルモン)へ変換されます。

    テストステロン

    エストロゲン

    女性化乳房

    その結果、男性であっても乳房が発達する「女性化乳房」が起こることがあります。

    症状が進行すると自然には改善せず、手術が必要になる場合もあります。

    肝障害

    アナボリックステロイドの中でも、経口剤では肝障害が問題になることがあります。

    軽度の肝機能異常から、黄疸や薬物性肝障害までさまざまな報告があります。

    特に長期間使用や高用量使用では注意が必要です。

    心血管イベント

    近年、アナボリックステロイドによる心血管系への影響も問題視されています。

    報告されている主なものとして、これらの症状があります。

    ・高血圧
    ・脂質異常症
    ・心筋梗塞
    ・脳卒中

    筋肉は大きくなっても、血管や心臓への負担は増加する可能性があります。

    精神症状

    アナボリックステロイドは精神面にも影響を与えることがあります。

    代表的なものとして、次のような精神的副作用が見られる可能性があります。

    ・攻撃性の増加
    ・イライラ
    ・気分の変動
    ・依存

    海外では、いわゆる「ロイドレイジ(roid rage)」と呼ばれる攻撃性の増加が話題になることもあります。

    実際の報告例

    アナボリックステロイドによる健康被害は、医学論文や症例報告でも数多く報告されています。

    例えば、過去にこれらが報告されています。

    ・若年者における心筋梗塞
    ・重度の肝障害
    ・拡張型心筋症や心不全
    ・突然死

    もちろん全ての使用者に起こるわけではありませんが、「若いから安全」というわけではありません。

    また、スポーツ庁も筋肉増強剤による健康被害や個人輸入の危険性について注意喚起を行っています。

    参考:スポーツ庁「筋肉増強剤を知る」

    https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop05/list/jsa_00072.html


    薬剤師としての考え

    筋肥大を目的としたアナボリックステロイドの使用は、高いリスクを伴います。

    実際に肝障害や心血管イベント、不妊、精巣萎縮などの副作用が報告されており、医療目的以外での使用は推奨されません。

    筋肉を大きくする効果は確かに存在しますが、その代償として将来的な健康被害を招く可能性があります。

    日本では筋肥大のみを目的としてアナボリックステロイドを処方することは認められていません。

    薬剤師として筋肥大を目的とした安易な使用はおすすめできません。

    ⑤ステロイドで筋肥大した後は?

    やめれば副作用はなくなるのか?

    アナボリックステロイドを使用して筋肉量を増やした後、「筋肉が付いたら使用を中止すれば、副作用だけ避けられるのでは?」と考える人もいるかもしれません。

    しかし実際には、そう単純な話ではありません。

    アナボリックステロイドによる副作用は、長期間使用した場合だけに起こるものではなく、短期間の使用でも生じる可能性があります。

    また、使用を中止した後もホルモンバランスの乱れが続くことがあり、回復までに長い時間を要するケースも報告されています。

    そのため、「少しだけ使ってやめれば安全」と考えるのは危険です。

    筋肉はそのまま維持できるのか?

    また、筋肉についても、ステロイド使用中に得られた状態を永久に維持できるわけではありません。

    使用を中止すると、筋タンパク合成能やホルモン環境は徐々にナチュラルな状態へ戻っていきます。

    トレーニングを継続していても、筋量は遺伝的要因やホルモン環境に大きく左右されるため、時間の経過とともに本来の範囲へ近づいていくと考えられています。

    マッスルメモリーとの関係

    一方で、近年はアナボリックステロイドによって増加した筋核(myonuclei)が長期間残存し、再びトレーニングを行った際に筋肉が付きやすくなる「マッスルメモリー」に関与する可能性が指摘されています。

    ただし、この現象がヒトでどの程度続くのか、またどれほど有利に働くのかについては、まだ十分に解明されていません。

    そのため、「一度だけ使って筋肉を手に入れれば、その後も有利な状態が続く」と断言できる段階ではありません。

    筋肉だけを手に入れることはできない

    少なくとも、アナボリックステロイドは「筋肉だけ手に入れて、副作用は避けられる」という都合の良い方法ではありません。

    筋肥大という大きなメリットがある一方で、その裏にはホルモンバランスの乱れや健康被害のリスクが存在します。

    使用を検討する際には、筋肉だけでなく、その代償についても理解しておく必要があるでしょう。

    ⑥まとめ

    「ステロイド」と一言で言っても、その種類によって作用は大きく異なります。

    プレドニン(糖質コルチコイド)とアナボリックステロイドは、どちらもステロイド骨格を持つ物質ですが、筋肉に対する作用は正反対です。

    プレドニンは筋タンパクの分解を促進し、長期間使用では筋力低下や筋萎縮を起こすことがあります。一方、アナボリックステロイドは筋タンパク合成を強力に促進し、筋肥大を引き起こします。

    また、アナボリックステロイドの中には個人輸入で入手できるものもあります。しかし、個人輸入された医薬品は品質や成分が保証されているとは限りません。

    さらに、副作用が生じた場合でも、国内で承認された医薬品のような救済制度の対象にならない可能性があります。

    筋肥大という魅力的な効果がある一方で、その裏にはホルモンバランスの乱れや心血管イベント、不妊などのリスクが存在します。

    筋肉を大きくしたいと考える場合は、安易に薬へ頼るのではなく、適切なトレーニングや栄養管理を継続することが最も安全で確実な方法と言えるでしょう。

  • 気管支喘息とは?原因・症状・治療と生活で気をつけることを薬剤師が解説

    気管支喘息は薬による治療だけでなく、環境を整えることが大切な病気です。
    タバコの煙、ハウスダスト、カビ、ペット、気温や湿度、生活習慣など、日常生活の中に症状を悪化させる要因がたくさんあります。

    気管支喘息について投稿しようと思った理由は、患者さん本人、もしくは小児喘息の場合は保護者が予防することで、発作を少なくできる可能性があるとブログを読んでくれている方に伝えたかったからです。

    この記事では、薬剤師の立場から「気管支喘息とは何か」「なぜ起こるのか」「どう治療し、どう生活すればよいのか」をわかりやすく解説します。

    気管支喘息は、発作が起きたときだけ注意すればよい病気ではありません。
    症状がないように見える時期でも気道の炎症が続いており、日常生活のさまざまな場面に影響を与える慢性疾患です。

    ■ 主な症状

    気管支喘息でよくみられる症状には、以下のようなものがあります。

    • 喘鳴(ぜんめい)
       「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった音を伴う呼吸
    • 息苦しさ・呼吸困難感
    • 咳(特に夜間・早朝に多い)

    これらの症状は、副交感神経が優位になる夜間〜明け方に悪化しやすく、症状が落ち着いている時期と悪化して発作を起こす時期を繰り返すという特徴があります。

    ■ 夜間・早朝の発作による睡眠への影響

    喘息発作は夜間から明け方に起こりやすく、咳や喘鳴で目が覚めてしまうことがあります。

    睡眠不足が続くと、日中の集中力低下から学校や仕事でのパフォーマンス低下や、疲れやすさや体調不良につながることもあり、生活の質(QOL)を下げる原因になります。

    ■ 学校・仕事・日常生活への影響

    症状が強い場合や、風邪などをきっかけに悪化するとこのような場面が生じることがあります。

    • 学校や仕事を欠席・早退する
    • 外出や旅行を控える
    • 人前で咳が止まらず不安を感じる

    特に小児では、体育の授業や運動会に参加できないことが精神的なストレスになることもあります。

    ■ 運動や活動の制限(QOLの低下)

    喘息が十分にコントロールされていないと活動量が制限されることがあります。

    • 運動中に息苦しくなる
    • 冷たい空気を吸うと咳が出る
    • 長時間走ることが難しい

    ただし、適切な治療でコントロールできていれば運動は原則可能です。
    「運動は禁止」ではなく、「発作を起こさないための準備と対策」が重要です。

    ■ 薬を継続して使う必要がある

    気管支喘息は、症状がない時期でも気道の炎症が続いている病気です。
    そのため、症状が落ち着いていて発作が出ていなくても吸入ステロイドなどの治療薬(コントローラー)を毎日継続することが重要になります。
    「苦しくないからやめる」→「再び悪化する」という悪循環に陥りやすいため、自己判断で中断しないことが大切です。

    ■ 発作時に備えて薬を持ち歩く必要がある

    外出先や学校、職場で突然発作が起こる可能性もあります。

    • 発作を抑える吸入薬(リリーバー)を携帯する
    • 小児では学校への薬の預け入れや管理

    このような対応が必要になることがあります。
    これは生活の制限ではなく、安心して日常生活を送るための備えと考えるとよいでしょう。

    気管支喘息は、アレルギー(IgE抗体)が関与しているかどうかによって、アトピー型喘息と非アトピー型喘息の大きく2つに分類されます。

    アトピー型喘息は小児に多く、アレルゲンに対して体が過剰に反応することで起こります。

    このタイプでは、特定のアレルゲンに反応して、IgE抗体(抗原特異的IgE)が増加し、肥満細胞からヒスタミンなどの炎症物質が放出されます。その結果、気道に炎症が起こり、気管支が狭くなって喘息症状が現れます。

    一方、非アトピー型喘息は成人以降に発症することが多く、血液検査で明確なアレルゲンやIgEの上昇がみられない(抗原非特異的)ケースが多く、原因特定が難しいとされています。

    感染や刺激など複数の要因が関与すると考えられています。

    ■アトピー型喘息の特徴

    • ダニ、ハウスダスト、ペットの毛、花粉などのアレルゲン吸入が原因
    • 血液検査でIgE高値や好酸球増加がみられることが多い
    • アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎を合併しやすい
    • 環境整備(アレルゲン対策)が症状コントロールに重要

    ■非アトピー型喘息の特徴

    • 風邪などの感染症、冷気、タバコの煙、PM2.5などの刺激が発作の誘因になる
    • 血液検査でIgEが正常範囲のこともある
    • 加齢や生活環境の影響を受けやすく、気道の過敏性が症状に関与すると考えられている

    実は気管支喘息には、1つの検査だけで確定できる明確な診断基準はありません。

    そのため、症状や検査結果、治療への反応などをもとに、医師が総合的に判断して診断します。

    参考とされる項目は以下のものがありますが、医療機関の設備や検査機器によって実施できる検査は異なるので、すべての検査が必ず行われるわけではありません。

    喘息に特徴的な症状

    咳、喘鳴(ゼーゼー)、呼吸困難、胸部の圧迫感など

    可逆性の気流制限

    日によって症状が変動する
    β₂刺激薬の吸入で症状や呼吸状態が改善する

    気道の過敏性亢進

    少しの刺激でも気管支が収縮しやすい状態 
    慢性的な気道炎症により、冷気・運動・煙などの刺激で気管支が収縮しやすい

    ・アトピー素因の有無

    小児では重要な所見
    成人喘息では参考所見の一つ

    喀痰中好酸球

    3%以上で好酸球性炎症を示唆
    専門的な検査のため、実施できる医療機関は限られる

    肺機能検査(スパイロメーター)

    息を強く吐いた量などを測定し、気道の狭さを数値で評価する検査

    ・喘息に似た病気の除外

    咳喘息、COPD、心疾患、アトピー咳嗽など

    治療への反応

    吸入ステロイドなどの治療で、次回受診時に症状が改善しているかどうか
    小児では肺機能検査が難しいことも多く、経過や治療反応を重視して診断される

    気管支喘息は、1つの原因だけで発症する病気ではありません。

    体質・遺伝・感染・成長過程などが重なり合い、気道に慢性的な炎症や過敏性が生じることで発症すると考えられています。

    ■アレルギー反応(アトピー素因)

    アトピー素因は一般的にはアトピー体質と呼ばれるもので、ダニやハウスダスト、花粉などのアレルゲンに対して免疫が過剰に反応しやすい特徴があります。

    その結果、IgE抗体を介したアレルギー反応が起こり、気道に炎症が生じやすくなり、喘息を発症・悪化しやすくなります。

    アトピー素因とは、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎、気管支喘息などのアレルギー疾患を起こしやすい体質を指します。

    すでに症状が出ている人だけでなく、蕁麻疹や湿疹などのアレルギー反応を繰り返しやすい人や、家族にアレルギー疾患がある人も含まれます。

    ■遺伝的要因

    家族に気管支喘息や、アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患がある場合、喘息を発症するリスクが高くなることが知られています。
    これは喘息そのものが遺伝するというより、「アレルギーを起こしやすい体質」が遺伝すると考えられています。

    ■感染症

    乳幼児期にかかるウイルス感染(RSウイルスなど)は、喘息の直接の原因ではありませんが、発症のきっかけになることがあります。
    気道が未熟な時期に強い感染を受けることで、気道の炎症や過敏性が残り、その後の喘息発症につながると考えられています。

    ■年代・性別差

    • 小児期では男児に多い
    • 思春期以降は男女差が小さくなる、または女性に多くなる傾向がある

    この違いには、気道の太さの違いやホルモンバランスの変化が関与していると考えられています。

    ■地域差

    • 日本では黄砂が多い地域(九州地方や中国地方)で症状悪化がみられることがある
    • 寒暖差の大きい地域では発作が起こりやすい
    • 海外では地域差や調査方法がそれぞれ異なるが、インド、バングラディシュ、イギリスなど大気汚染の強い国でリスクが高いとされる

    ■アレルゲン

    • ダニ
    • ハウスダスト(室内のホコリ。ダニの死骸やフンを含む)
    • カビ
    • ペットの毛・フケ
    • 花粉

    免疫(IgE)が関与する原因物質なのでアトピー型喘息では特に重要です。
    ただ、 非アトピー型でも悪化因子になることはあります。

    ■刺激・環境による発作誘因

    • タバコの煙(受動喫煙含む)
    • PM2.5・黄砂
    • 排気ガス
    • 線香・お香・アロマの煙
    • 石油ストーブなど暖房器具の排気
    • 掃除機・布団の上げ下ろし時の粉塵

    これらはアレルゲンではありませんが、吸い込むと直接気道を刺激するため、気道の過敏性が高い方では発作を起こしやすくなります。

    アトピー型・非アトピー型どちらでも発作の引き金となりえますが、特に非アトピー型では、アレルゲンよりもこうした刺激が主な原因となっていることが多いため重要です。

    ■体の状態・行動による発作誘因

    これらは環境中の物質ではなく、体調や行動の変化によって気道が過敏になることで起こる発作誘因です。

    • 運動(運動誘発喘息)
    • 風邪・ウイルス感染
    • 冷たい空気の吸入
    • 気温・湿度の急激な変化
    • 強いストレス・疲労

    これらの状態になることもアトピー型・非アトピー型に関わらず、普段コントロール良好の方でも発作の原因になることがあります。

    ■対処法

    気管支喘息は、発作が起きてから対処する病気ではなく、発作を起こさないように予防がとても重要な病気です。

    そのためには、自分(またはお子さん)の喘息発作の引き金となる原因を、ある程度把握しておくことが大切になります。

    何に対してアレルギーを持っているかは、病院で血液検査を行い、ある程度は把握することが可能です。

    アレルゲンでなくとも、喘息発作の原因となっているものが分かっていれば、原因物質に近づかない、掃除、換気、禁煙、マスク、休養などの対策が出来ます。

    原因物質をゼロにすることが出来なくても、量を減らすことでも効果が期待出来ます。

    気管支喘息は、「原因を知る → 避ける工夫をする → 薬で炎症を抑える」この積み重ねで、日常生活を大きく制限せずに過ごせる病気です。

    吸入ステロイドなどの長期管理薬を継続することで、気道の炎症や過敏性そのものを抑え、発作を起こしにくい状態を保つことができます。

    症状が安定していれば、医師の指示のもと、事前に吸入薬を準備して、部活動や体育で運動することが可能なケースも少なくありません。

    発作を我慢するのではなく、起こさないようにすることが、安心して生活するための近道です。

    気管支喘息の治療は、気道の慢性的な炎症を抑えることが基本です。
    症状があるときだけ治療するのではなく、発作を起こさないための継続治療が重要になります。
    以下にそれぞれの薬の代表例を記載しています。

    【1】 吸入ステロイド(ICS):第一選択薬

    フルチカゾン(フルタイド)、ブデソニド(パルミコート)

    • 気道の慢性炎症を抑える、喘息治療の中心となる薬
    • 症状がない時期でも毎日使用する
    • 局所作用(ほぼ気管支だけに作用)なので、正しく使えば全身への副作用は少ない

    気管支喘息の症状がなく苦しくない状態は、病気が治っているのではなく、薬により炎症を抑え続けているからです。
    吸入ステロイドによる口腔カンジダや嗄声などの副作用防止のため、吸入後にうがいを行います。



    【2】 β₂刺激薬

    短時間作用型(SABA)

    サルブタモール(サルタノール)、プロカテロール(メプチン)

    長時間作用型(LABA)

    ツロブテロール(ホクナリン)、サルメテロール(セレベント)、インダカテロール(オンブレス)

    • 気管支を広げ、息苦しさを速やかに改善
    • SABAは発作時の頓用薬(リリーバー)
    • LABAは単独使用は推奨されず、吸入ステロイドと併用が基本

    発作を抑える薬と炎症を抑える薬とで役割は異なります。

    β₂刺激薬も吸入後のうがいが推奨されています。

    【3】抗コリン薬

    チオトロピウム(スピリーバ)、イプラトロピウム(アトロベント)

    吸入ステロイドやβ₂刺激薬で効果不十分な場合の追加治療や、COPD合併例や高齢者の喘息に使われることがあります。
    閉塞隅角緑内障や前立腺肥大症には禁忌です。

    【4】配合剤

    サルメテロール・フルチカゾン(アドエア)

    ブデソニド・ホルモテロール(シムビコート)

    フルチカゾン・ホルモテロール(フルティフォーム)

    フルチカゾン・ビランテロール(レルベア)

    インダカテロール・グリコピロニウム・モメタゾン(エナジア)

    フルチカゾン・ウメクリジニウム・ビランテロール(テリルジー)

    ブデソニド・グリコピロニウム・ホルモテロール(ビレーズトリ)

    複数の吸入剤を併用するよりも、配合剤で手間を減らしたり、吸入の間違いを予防することで治療の継続がしやすくなるという利点があります。
    また、気管支を広げた状態で吸入ステロイドを届けることができるため、より高い治療効果が期待されます。

    【5】ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)

    モンテルカスト(シングレア)、プランルカスト(オノン)

    • アレルギーに関わる炎症物質の働きを抑える
    • 軽症喘息や小児喘息で使われることが多い
    • アレルギー性鼻炎を合併している場合に有効

    【6】テオフィリン徐放剤

    テオフィリン(テオドール)

    • 気管支拡張作用をもつ
    • 血中濃度管理が必要
    • 主要な治療薬で効果不十分の場合に有効な補助治療として使われることがある



    【7】経口ステロイド薬

    プレドニゾロン(プレドニン)

    • 強力な抗炎症作用
    • 急激な悪化時や重症例で短期間使用
    • 生命にかかわる重症発作時ではパルス療法を行うことがある

    ■ その他の治療(補足)

    • 従来の治療で効果不十分な重症喘息に対しては生物学的製剤を検討する
    • 重症発作時には酸素吸入やボスミン皮下注など
    • 補助的に抗ヒスタミン薬や漢方薬が用いられることも
    • アレルゲン免疫療法で体質改善を目指すことも出来る場合がある
    • 病院や自宅でネブライザーを用いた吸入を行うこともある

    気管支喘息の治療は、年齢や症状の程度、生活状況などを考慮し、主治医の判断で行われます。一般的には、吸入ステロイドを長期管理薬として継続し、発作時にはβ₂刺激薬を使用します。必要に応じて他の薬剤を追加し、段階的に治療を調整していきます。
    詳しくは厚生労働省のガイドラインをご参照ください。

    【厚生労働省:成人喘息の疫学、診断、治療と保険指導、患者教育】
    https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-07-0001.pdf

    【厚生労働省:小児喘息の疫学、診断、治療と保険指導、患者教育】
    https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-06-0007.pdf

    実は、喘息を経験しながらも一流のアスリートとして活躍したのはこちらの方々です。

      羽生結弦さん(フィギュアスケート)

      藤川球児さん(元プロ野球選手)

      岡崎慎司さん(元サッカー日本代表)

    気管支喘息は、適切な治療と自己管理を続けることで、日常生活はもちろん、スポーツや仕事、やりたいことを諦めずに続けることが可能な病気です。
    大切なのは我慢することではなく、正しく知り、上手につきあうことです。
    お子さんであれば、保護者が病気や薬のことを理解し、治療のサポートを行う必要があります。

    喘息の症状や治療内容、薬の使い方には個人差があります。不安なことや分からないことがあれば、自己判断せず、主治医や薬剤師に相談しながら治療を進めていきましょう。