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  • なぜ新薬の発売時は卸の営業が熱心なのか?トピロリックにまつわる薬剤師の実体験

    なぜ新薬の発売時は卸の営業が熱心なのか?トピロリックにまつわる薬剤師の実体験

    薬局で働いていると、医薬品卸の営業担当者から、こんなことを言われることがあります。

    「今回の新薬、ぜひ弊社からお願いします!」

    薬剤師なら、一度くらい経験があるのではないでしょうか?

    私自身、特に印象に残っているのが、トピロリック錠が発売されたときです。

    製薬会社の勉強会が開かれ、医薬品卸の営業もかなり熱心でした。

    当時の私は、こんな疑問を持っていました。

    郷ツトム
    郷ツトム

    トピロリックって、そんなに高薬価じゃないのに、なんでこんなに営業熱心なの?

    実は、新薬を「1箱売る」ことだけが、営業担当者の目的ではありません。

    新薬の発売には、製薬会社だけでなく、医薬品卸にとっても、その後の取引につながる事情があります。

    今回は、当時の経験や医薬品卸の担当者から聞いた話も参考にしています。

    「なぜ新薬が発売されると、卸の営業はこんなに熱心になるのか?」

    その背景を、トピロリック錠の少し変わった事情に沿って考えてみます。

    まずは、トピロリック錠がどんな薬だったのかから見ていきましょう。


    ① トピロリック錠はどんな薬?

    まずは、当時発売された尿酸生成抑制薬のトピロリック錠(トピロキソスタット)について紹介します。

    薬理作用

    非プリン型のキサンチンオキシダーゼ(XOR)阻害薬に分類されます。

    トピロキソスタットは、尿酸の生成に関わるキサンチンオキシダーゼを選択的に阻害することで、尿酸の生成を抑え、血中尿酸値を低下させる薬です。

    適応

    痛風・高尿酸血症

    副作用

    肝機能障害、多形紅斑などの副作用があります。

    また、痛風発作中にトピロリックの投与を開始・増量すると、痛風発作を悪化させることがあるため注意が必要です。

    当時の同効薬との関係

    • ザイロリック(アロプリノール)

    長年の使用実績があるが、腎機能低下に対して減量が必要となる。

    • フェブリク(フェブキソスタット)

    主に肝臓で代謝されるので、腎機能低下者にも比較的使いやすい。

    尿酸低下作用が強く、尿酸値が高い人に選択されることがある。

    • トピロリック(トピロキソスタット)

    主に肝臓で代謝されるので、腎機能低下者にも比較的使いやすい。

    尿酸値を下げるとともに、慢性腎臓病患者の尿中アルブミンを減らすというデータがある。

    当時、すでに同じXOR阻害薬としてフェブリクが使用されており、トピロリックはその競合となる新薬として登場しました。

    実際、2013年の薬価算定でも、フェブリクが「最類似薬」として扱われています。

    トピロリックの発売時の薬価

    ここが、今回の記事ではちょっと重要なポイントです。

    トピロリック錠が発売された2013年当時の薬価は、こちらの表の通りでした。

    規格2013年の薬価2026年の薬価
    トピロリック錠20mg20.60円/錠14.80円/錠
    トピロリック錠40mg38.90円/錠28.90円/錠
    トピロリック錠60mg56.40円/錠39.80円/錠

    1錠数十円ですから、いわゆる「超高額な新薬」というわけではありませんでした。

    それでも、当時のトピロリックには営業する側から見て、魅力的なポイントがありました。

    次は、そこを掘り下げてみます。

    ② なぜ富士薬品はトピロリックを発売したのか?

     富士薬品がトピロリックを発売した背景

    富士薬品といえば、昔から配置薬やドラッグストア事業で知られている会社です。

    一方で、医療用医薬品の研究開発にも取り組んでおり、2013年には三和化学研究所と共同開発したトピロリック錠を発売しました。

    富士薬品は1991年から医療用医薬品の研究開発に取り組み、2013年にトピロリック、2020年にはユリスを世に送り出しました。

    一方で、2025年には総合研究所の閉鎖を決定。2026年にはトピロリックの事業譲渡も発表しています。

    トピロリックは、ビジネスとしても期待できる新薬だった

    では、なぜ富士薬品はトピロリックを新薬として開発・発売したのでしょうか?

    その理由の一つが、痛風・高尿酸血症という、治療を必要とする患者が多い領域だったことです。

    ただ、2013年当時には、すでにフェブリクなどの尿酸生成抑制薬が使われていました。

    つまりトピロリックは、すでに治療薬のある市場に、新たな選択肢として参入した新薬だったのです。

    トピロリックは、1箱の価格が高い薬ではありません。

    しかし、慢性期の疾患に使われる薬で、継続的な処方が期待できることから、ビジネス面でも魅力のある新薬だったと考えられます。

    では、なぜ製薬会社だけでなく、医薬品卸の営業担当者まで熱心だったのでしょうか?


    ③ 医薬品卸各社が思っていたこと

    新薬が発売されるとき、医薬品卸は何を考える?

    新薬が発売されると、医薬品卸の営業担当者も積極的に営業活動を行います。

    その背景には、次のような事情があります。

    • 新薬を自社から発注してほしい
    • 販売に協力し、メーカーとの関係を強化したい
    • 継続処方される薬で将来の売上につなげたい

    新薬の発売は、卸にとっても販売実績を作り、メーカーとの関係を深めるチャンスなのです。

    トピロリックの発売時は?

    トピロリックの発売時には、こうした一般的な事情に加えて、医薬品卸と富士薬品との関係づくりという側面もありました。

    実際に当時の卸の担当者から、こんな言葉を聞いたことがあります。

    「このタイミングで富士薬品さんに、いい顔をしたいんです。」

    富士薬品が今後、医療用医薬品の事業を広げていく可能性も考えると、卸としても、このタイミングで良い関係を築いておきたい。

    そんな思いも、トピロリックの営業に熱が入る理由の一つだったのかもしれません。

    ④ まとめ

    当時は「なぜこの薬に、ここまで営業するんだろう?」と不思議に思っていました。

    しかし、製薬会社と医薬品卸、それぞれの立場から考えると、単に「1箱でも多く売りたい」という話でもなかったのかもしれません。

    新薬の発売は、製薬会社にとっては新たな薬を市場に広げる機会であり、医薬品卸にとっても、メーカーとの関係を築き、今後の取引につなげるチャンスです。

    一方、2025年に富士薬品は総合研究所の閉鎖と、新薬の創出に向けた研究開発の中止を発表しました。

    その後、トピロリックについても、他社への権利譲渡が発表されています。

    当時は熱心な営業に疑問を感じていましたが、企業それぞれの事情を知ると、その見え方も変わってきます。

    今後も業界に変化が起これば、薬局に思わぬ営業がやってくるかもしれません。