ビタミンAは「目・皮膚・免疫」の健康を守る重要な脂溶性ビタミンです。一方で、摂りすぎると副作用や妊娠への悪影響が出ることもあり、正しい知識が欠かせません。
この記事では、薬剤師の立場からビタミンAについてわかりやすく解説します。
目次
①ビタミンAとは(構造と種類)
②ビタミンAの特徴と効果
③ビタミンA欠乏症・過剰症
④ビタミンAの摂取量と摂取方法
⑤ビタミンAが多い食品
⑥妊婦さんに知ってほしいビタミンAの注意点
⑦ビタミンAおよび誘導体の処方薬と使われ方
⑧最後に
①ビタミンAとは(構造と種類)
ビタミンAは脂溶性ビタミンの一種で、主に以下の形で存在します。

- β-カロテン(植物性食品に含まれる前駆体)
- レチノール(動物性食品に含まれる)
- レチナール(視覚に関与)
- レチノイン酸(皮膚や細胞分化に関与)
植物性食品に含まれるβ-カロテンは、体内で必要量に応じてレチノールに変換され、さらに酸化されてレチナールやレチノイン酸となります。
食品中のビタミンA量は「レチノール活性当量(RAE)」という単位(μgRAE)で表されます。
②ビタミンAの特徴と効果
ビタミンAは体のさまざまな働きに関与しています。
■目の健康を守る
レチナールは網膜でロドプシンという物質の材料となり、暗い場所で物を見る機能(暗順応)に必要です。
■ 皮膚・粘膜を健康に保つ
レチノイン酸は細胞の中にある核内受容体(RAR)に結合して遺伝子転写を促進し、細胞の分化、発生、成長、皮膚粘膜形成に関わります。
乾燥や肌荒れを防ぎ、皮膚のターンオーバーを助けるため、美肌の維持に役立つ可能性があります。
■ 免疫機能の維持
のど・腸・肺などの粘膜を健康に保ち、細菌やウイルスの侵入を防ぎます。
■ 成長・骨・神経の発達
子どもの骨・筋肉・神経の成長にも関与します。
■ 抗酸化作用(β-カロテン)
β-カロテンには活性酸素を抑える抗酸化作用があり、老化や生活習慣病の予防に役立つと考えられています。
③ビタミンA欠乏症・過剰症
■ビタミンA欠乏症
明らかな欠乏症は日本では稀ですが、以下の症状が出ることがあります。
- 夜盲症(暗い所で見えにくい)
- ドライアイ
- 皮膚の乾燥
- 成長障害
- 免疫力低下
■ビタミンA過剰症
脂溶性ビタミンのため体に蓄積しやすく、過剰摂取で以下の症状が出ることがあります。
- 悪心・嘔吐
- 頭痛
- 頭蓋内圧亢進
- 脱毛
- 骨密度低下
■ビタミンA過剰摂取で注意すべきポイント
- レバー、うなぎ、卵黄、バターなどの動物性食品はレチノール型で吸収率が高い
- サプリメントの長期使用は特に注意
豚・鶏レバーは少量でも非常に多くのビタミンAを含みます。
一方、野菜に含まれるβ-カロテンは必要な分だけ変換されるため、重篤な過剰症はほとんど起こりません。
β-カロテンを摂りすぎると皮膚が黄色くなる「カロテン血症」が起こることがありますが、健康への大きな害はありません。
④ビタミンAの摂取量と摂取方法
ビタミンA摂取基準は以下の表のようになっています。

現代では食生活が豊かになり欠乏症の症状を起こすケースはほとんど見かけません。
ただ、個人差がありますが、偏食や野菜不足等の栄養の偏りから一部の若年層や偏食のある方では不足することがあります。
■ビタミンAの効率的な摂り方
食品に含まれるビタミンAやβ-カロテンは脂溶性なので水に溶け出にくく、脂質と一緒に摂ることで腸からの吸収率がアップします。油で炒めたり、ドレッシングオイルやナッツなどの脂質と組み合わせて食べることが効果的です。
加熱調理をすることもあると思いますが、β-カロテンは熱に比較的強く、レチナールは熱、光、酵素、酸に弱い事も知っておいた方がよいでしょう。
⑤ビタミンAが多い食品
(可食部100gあたりのビタミンAをレチノール活性当量(μgRAE)で表記)
■動物性食品
- たらの油:37,000
- 鶏レバー:14,000
- 豚レバー:13,000
- あん肝:8,300
- うなぎの蒲焼き:1,500
- ホタルイカ:1,500
- 生ぎんだら:1,500
- 牛レバー:1,100
- 無発酵有塩バター:520
- 生卵:210
■植物性食品
- 焼きのり:2,300
- しそ:880
- モロヘイヤ:840
- 粉唐辛子:720
- にんじん:720
- パセリ:620
- 春菊:380
- 乾燥わかめ:370
- ほうれん草:350
- 西洋かぼちゃ:210
参考資料:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂・増補2023年)」
⑥妊婦さんに知ってほしいビタミンAの注意点
ビタミンAには催奇形性(赤ちゃんの体の形に異常が出るリスク)があります。
■妊娠中の注意
- 動物性レバーの大量摂取を避ける
- 高濃度ビタミンAサプリメントを避ける
- 上限量(2,700 μgRAE/日)を超えない
妊婦さんは葉酸やビタミンAはもちろん、栄養摂取のためには緑黄色野菜をバランスよく摂取する事がとても大事です。野菜由来のβ-カロテンであれば過剰症リスクはほぼありません。
サプリを飲むのであれば成分表示が「β-カロテン」または「ビタミンA(β-カロテン由来)」となっているものをお勧めします。
また、妊娠・授乳中は使用できない薬も多いため、病院や薬局では必ず申告しましょう。
⑦ビタミンAおよび誘導体の処方薬と臨床での使われ方
■栄養療法
経腸栄養剤(エンシュア、エネーボなど)や高カロリー輸液用総合ビタミン剤(マルタミンなど)にはビタミンAが含まれています。
■ビタミンA内服薬
チョコラA錠(レチノールパルミチン酸エステル)
以下のような特殊な病態で使用されます。
- 膵嚢胞性線維症(膵外分泌不全により脂肪吸収が障害される)
- アベタリポプロテイン血症(遺伝性で脂質と一緒にビタミンAを運べない)
- 短腸症候群
- 胆道閉鎖症
いずれも希少疾患で、一般診療ではほとんど見かけません。
■皮膚科領域のビタミンA誘導体
- ディフェリンゲル(アダパレン):ニキビ治療
- ザーネ軟膏(ビタミンA):角化症・乾燥
- チガソンカプセル(エトレチナート):重症角化症
■血液内科領域(抗がん剤)
急性前骨髄球性白血病(APL)ではこちらの薬剤がAPL治療ガイドラインにおいて寛解導入療法の標準治療で使われます。
- ベサノイドカプセル(トレチノイン)
- アムノレイク錠(タミバロテン)
これらはアントラサイクリン系抗がん剤と併用して使われ、白血病細胞を分化させる特殊な作用を持ちます。
⑧最後に
- ビタミンAは目・皮膚・免疫に重要
- 欠乏は少ないが過剰摂取には注意
- 妊婦は特に動物性ビタミンAを控える
- 医療現場では栄養剤・皮膚科・血液内科で使用される
サプリメントや食事で迷った場合は、自己判断せず医師や薬剤師に相談しましょう。
正しい知識で、安全にビタミンAを活用してください。
