夏場になると子どもの肌に、ポツポツとした「みずいぼ」ができているのを見たことはありませんか?
かゆみも痛みもあまりないのに、いつの間にか数が増えている…。
実はこれ、「伝染性軟属腫(みずいぼ)」というウィルスによる皮膚感染症です。
ここでは、薬剤師の視点から「みずいぼがどんな病気なのか」「どう治すのか」「感染を広げないために何を気をつければいいのか」まで、わかりやすく解説します。
①みずいぼはどんな人がなりやすい?
みずいぼは1歳〜10歳くらいの小児に多くみられる病気ですが、特にプールの季節に感染が増えます。
感染のきっかけは、肌と肌の接触なので、兄弟姉妹やお友達とのスキンシップが多い時期に広がりやすいのです。
大人でも感染することはありますが、免疫力がしっかりしているためほとんどは軽症です。
一方で、アトピー性皮膚炎などで皮膚バリアが弱っている人は感染しやすく、治りにくい傾向があります。
②みずいぼの特徴
原因は「伝染性軟属腫ウィルス(ポックスウィルスの一種)」で、このウィルスが皮膚の表面に感染し、中央が少し凹んだ白っぽい丘疹を作ります。
- 見た目の特徴:1〜5mm程度の丸いツヤのあるイボ。中央が少しくぼむ。
- 痛みやかゆみはほとんど無いが、掻くと炎症を起こして赤くなることも。
- 最初は数個でも、掻くことで自己感染してどんどん増える。
- 経過としては自然に免疫ができ、半年〜2年ほどでそのまま治ることが多い。
血液検査や特別な検査は基本的に不要で、皮膚科医が見た目で診断できます。
③みずいぼの治療薬 塗り薬・飲み薬はある?
みずいぼには以下の治療薬を使う事があります。
- ワイキャンス外用薬
2025年9月に承認。
作用機序は明確にされていないが、中性セリンプロテアーゼの活性化を介し、表皮のデスモソームを脆弱化し、表皮構造を破壊することで塗布部位に水疱を形成する。
水疱の形成により病巣皮膚が剥がれ落ち、ウィルス感染組織が除去されると考えられている。
3週間に1回病院内で塗布。 - MBFクリーム
銀イオンの抗ウィルス作用がみずいぼの原因ウィルス(伝染性軟属腫ウィルス)を抑制する。
さらに、もう1つの細分であるサクランは保湿効果と抗炎症作用がある。
医師の診断後に自費で購入する必要あり。 - ヨクイニン
体内の水分バランスを整え、余分な水分や老廃物を輩出することで、肌のターンオーバーが活性され、イボを体外に排出する。
また、免疫細胞の働きを整えることで症状改善に期待されると考えられています。 - スピール膏
サリチル酸が患部に浸透する事で、角質を柔らかくして皮膚をふやかし、いぼを剥がしやすくする。
患部以外に貼ると、皮膚を傷つける恐れがあるので、患部のみに貼る。
ただし、市販のスピール軟膏は、ミズイボへの適応がないので注意。
上記の薬物治療は痛みがない治療として、患者さんの状況に合わせて選択されます。
みずいぼの症状に加えて皮膚が乾燥しているとウィルスが広がりやすくなるため、保湿剤(ヘパリン類似物質やワセリンなど)で肌を守ることも大切です。
アトピー性皮膚炎を併発している場合は、ステロイド外用薬でかゆみや炎症を抑え、掻かないようにするのも有効です。
④みずいぼの治療 病院での処置と家庭での注意点
■ 医療機関での処置
皮膚科では「ピンセットで1つずつ取り除く(摘除法)」が一般的です。
痛みを伴いますが、麻酔のシール(エムラクリームなど)を使うことで痛みを軽減できます。
他にも、液体窒素による凍結療法もありますが、こちらも痛みを伴います。
また、みずいぼは自然治癒も可能ですが、免疫がついて完治するまで時間がかかるので、他の人にうつしてしまったり、とびひ等の二次感染のリスクを考えると、病院を受診して治療することをお勧めします。
■ 感染を防ぐには
- タオルや衣類の共用を避ける
- 入浴やプール後はしっかり身体を洗う
- 掻かないように短く爪を切る
感染経路は主に接触感染ですが、肌と肌が触れやすい環境(プールなど)では広がる可能性があります。
■ 登園・登校について
多くの自治体では、登園・登校の制限は不要です。
ただし、医師が「感染を広げやすい」と判断した場合のみプールを控えるよう指導されることがあります。
⑤食事・生活の注意点
免疫力を落とさないことが大切です。
ビタミンA・C・Eを多く含む野菜や果物をとり、睡眠と保湿ケアをしっかり行いましょう。
皮膚のバリアを保つことで、ウィルスが侵入しにくくなります。
⑥最後に
みずいぼという名前ですが、実は中に入っているのは水ではなく、モルスクム小体というウィルスと変性した皮膚組織が混ざり合った白い粥状の塊です。
潰すとウィルスが拡散してしまうため、絶対に自分でつぶさないようにしましょう。
みずいぼはウィルスによる皮膚感染症で、自然に治る病気である反面、症状が広がったり、他の人への感染に注意が必要です。
家庭でのスキンケアと、必要に応じた皮膚科での除去で、清潔な肌を保ちましょう。