タグ: 薬剤師

  • 【薬剤師が解説】オーバードーズはなぜ危険?市販薬を大量に飲むと何が起こるのか

    【薬剤師が解説】オーバードーズはなぜ危険?市販薬を大量に飲むと何が起こるのか

    今回の投稿の結論を最初に言います。

    薬理学的に、リスクの大きいオーバードーズは割に合いません。

    郷ツトム
    郷ツトム

    薬のオーバードーズ・・・
    その一瞬に命をかけるほどの価値ある?

    「薬をたくさん飲むと、嫌なことを忘れられる」

    「気分が変わる」

    そんな理由から、市販薬などを大量に飲む「オーバードーズ(OD)」が問題になっています。

    しかし、薬はたくさん飲めば、欲しい効果だけが強くなるわけではありません。

    作用が強くなりすぎれば、副作用や中毒症状、さらには生命に関わる危険につながることがあります。

    今回は、代表的な薬を例に、「なぜオーバードーズは割に合わないのか」を薬理学の視点から解説します。




    ① オーバードーズに使われる薬は本来何のための薬?

    オーバードーズに使われることのある市販薬には、どんなものがあるでしょうか?

    厚生労働省は以下の8成分を「指定濫用防止医薬品」に指定しています。

    ※外用剤は対象外


    これらは本来、咳や鼻づまり、アレルギー症状などの改善や、鎮静・催眠などを目的として使われる薬です。

    これらの薬をどうして大量に飲む人がいるのでしょうか?そしてなぜそれが問題になるのでしょうか?

    それは、薬には本来の目的とする作用以外にも、さまざまな作用があるからです。

    では、たくさん薬を飲めば、気分が良くなったり、自分が望む作用だけが強くなったりすると思いますか?

    薬は、そんなに都合よくできてはいません。

    次は、代表的な薬を1つ取り上げて、薬理作用からオーバードーズで何が起こるのかを見ていきましょう。

    ② オーバードーズは、なぜ「割に合わない」のか?

    ここでは、オーバードーズに使われることのあるデキストロメトルファンを例に見てみましょう。

    デキストロメトルファンは何の薬?

    デキストロメトルファンは、かぜ薬などに含まれる咳止めの薬です。

    では、なぜ咳止めの薬がオーバードーズに使われるのでしょうか?

    ポイントは、デキストロメトルファンが中枢神経に作用する薬だということです。

    デキストロメトルファンは、服用後に消化管から吸収されて血液中に入り、血液脳関門を通過して、複数の受容体や神経伝達系に作用します。

    そして、延髄を中心とする咳反射の神経回路に作用し、咳反射を抑制します。

    他にも、NMDA受容体拮抗作用や、セロトニン作動性神経系への作用があることが知られています

    つまり、「咳にだけ作用する薬」ではなく、脳に作用することで咳を抑える薬なのです。


    デキストロメトルファンを大量に飲むとどうなる?

    薬を大量に飲めば、多幸感や非日常的な感覚のような、自分が望む作用だけを強く感じることができるのでしょうか?

    もちろん、そうではありません。

    デキストロメトルファンには、通常の用量でも呼吸抑制、頭痛、悪心などの副作用が起こることがあります。

    オーバードーズによって作用が過度に強くなれば、呼吸停止、意識消失、セロトニン症候群などの重篤な中毒症状が起こることもあります。 

    そして本当に怖いのは、治療を受ければ必ず元に戻るとは限らないことです。

    重い中毒では死亡することもあり、呼吸障害などによって脳に十分な酸素が届かなくなれば、後遺症が残る可能性もあります。

    また、意識や判断力が低下することで、転倒や事故につながる危険もあります。

    さらに、繰り返し使用すると、依存や離脱症状により、オーバードーズから抜け出せなくなるかもしれません。

    一時的な現実逃避のために、ここまでのリスクを背負う必要があるでしょうか?

    これが、オーバードーズが「割に合わない」理由です。


    ③ もしオーバードーズしてしまった時の相談先は?

    オーバードーズしてしまった場合は、できるだけ早く周囲の人や医療機関などに助けを求めましょう。
    まず大切なのは、自分を責めることではなく、自分の安全を守ることです。

    オーバードーズした後どうする?

    すでに薬を大量に飲んでしまった場合、「今は症状がないから大丈夫」と自己判断しないことが大切です。

    オーバードーズ後に、次のような症状がある場合は、すぐに119番へ連絡してください。

    • 意識がもうろうとする、意識を失う
    • 呼吸が苦しい、呼吸がおかしい
    • けいれんする
    • 強い動悸やふらつきがある
    • 激しい嘔吐や体調の急激な悪化がある

    また、何をどれくらい飲んだのか分からない場合や、複数の薬を飲んでしまった場合も、自己判断せずに医療機関や中毒110番へ相談しましょう。

    中毒110番では、医薬品などによる急性中毒について、一般の人からの相談を365日24時間受け付けています。

    公益財団法人日本中毒情報センター|中毒110番・電話サービス

    医療機関や中毒110番に対して「オーバードーズだから相談しづらい」と思わなくて大丈夫です。

    急性中毒が心配なときは、迷わず相談しましょう。


    「やめられない」ことを相談してもいい

    「オーバードーズをやめたいけど、やめられない」

    これだけでも、相談していいんです。

    オーバードーズを繰り返している場合は、薬の問題だけではなく、その背景にあるつらさやストレス、孤独などについて相談することも大切です。

    精神科・心療内科などの医療機関を受診するほか、公的な相談窓口に相談することもできます。

    「ODをやめたいのに、やめられない」という場合は、下記URLから各地域の精神保健福祉センターに相談できます。

    厚生労働省|薬物乱用防止相談窓口一覧

    また、「ODについて相談したいけど、どこに何を相談すればいいのか分からない」という場合は、こころの健康相談統一ダイヤルに電話してみるのも一つの方法です。

    こころの健康相談統一ダイヤルは、全国共通の電話番号0570-064-556に電話すると、電話をかけた地域の公的な相談機関につながります。相談内容に応じて、適切な相談先を案内してもらえます。

    「誰に相談したらいいのか分からない」こと自体を相談しても大丈夫です。

    厚生労働省|こころの健康相談統一ダイヤル


    薬局・ドラッグストアの薬剤師に相談したら?

    「オーバードーズをしてしまった」「やめたいけど、やめられない」と薬剤師に相談することもできます。

    薬剤師や登録販売者は、相談を受けたときに必要に応じて医療機関や相談窓口につなぐ役割があります。

    厚生労働省も、相談窓口の一覧を渡すだけの一律・機械的な対応ではなく、個別の状況に応じて、窓口の担当者につなぐところまで対応するなど、丁寧な対応を求めています。

    厚生労働省|一般用医薬品の乱用(オーバードーズ)について(薬剤師、登録販売者の方へ)

    「薬剤師に相談したら怒られる」
    「どこかに通報されるかもしれない」

    そう考えて一人で抱え込む必要はありません。


    なぜオーバードーズしてしまったのかを振り返る

    「なぜ薬を大量に飲みたくなったのか」を振り返ることが、次にODを繰り返さないためのきっかけになるかもしれません。

    はっきりと分からないこともあるかもしれませんが、ストレスや孤独、生きづらさなど、ODをしてしまう背景には何があるのかを考えてみると、誰かに相談するきっかけになるかもしれません。


    ④ まとめ

    オーバードーズは、薬理学的に考えても「割に合わない」行為です。

    薬は、たくさん飲めば自分が望む作用だけが強くなるわけではありません。

    作用が強くなりすぎれば、中毒症状や意識障害、呼吸障害など命に関わる危険につながることがあります。

    今回、例として取り上げたデキストロメトルファンも、咳を抑えるための薬ですが、過量になると中枢神経系への作用が強くなり、重い中毒につながることがあります。

    「一時的につらいことを忘れたい」

    「今の気持ちから逃げたい」

    そんな気持ちがあったとしても、そのために命や健康を大きく危険にさらす必要はありません。

    もし、すでにオーバードーズをしてしまった場合や、「やめたいけど、やめられない」と感じている場合は、一人で抱え込まず、医療機関や相談窓口、薬剤師などに相談してください。

    オーバードーズをしてしまったことよりも、これからどうするかが大切です。

  • 【薬剤師向け】施設在宅で迷わない!居宅療養管理指導の算定可否を施設別に整理

    【薬剤師向け】施設在宅で迷わない!居宅療養管理指導の算定可否を施設別に整理

    在宅医療について調べていると、入居している施設や利用している介護サービスによって、薬剤師が訪問できるのか、居宅療養管理指導を算定できるのかが異なることに気づきます。

    新人薬剤師ちかちゃん
    新人薬剤師ちかちゃん

    居宅療養管理指導を算定できない施設は?
    何を基準に判断したらいいの?

    なんて思ったことありませんか?

    高齢者施設にはさまざまな種類があり、さらに「暮らす場所」と「通う場所」では、薬剤師の関わり方も異なります。

    そこで今回は、高齢者施設・住まい・通所介護サービスの違いを整理しながら、薬剤師が在宅対応できるか判断するためのポイントを分かりやすく解説します。


    ①薬剤師が施設在宅で迷いやすい理由

    薬剤師が施設への訪問や居宅療養管理指導について迷いやすい理由の一つが、高齢者が利用する施設やサービスによって、薬剤師の関わり方が異なるからです。

    高齢者が生活する場所には、特養や有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅など、さまざまな種類があります。

    一方、デイサービスやデイケアは、基本的に自宅から施設へ通って利用するサービスです。

    そのため、薬剤師が在宅対応できるかを考えるときは……

    「その人は、そこで生活しているのか?それとも、そこへ通っているのか?を区別することが重要です。」

    ②高齢者施設・住まい・通所介護サービスの違い

    高齢者が利用する施設や介護サービスには、さまざまな種類があります。

    まずは、「そこで生活する場所」と「自宅から通って利用する場所」に分けて考えると、それぞれの違いが整理しやすくなります。

    ここでは、薬剤師が在宅対応を考えるうえで知っておきたい施設・サービスについて、特徴や薬剤師の関わり方、居宅療養管理指導のポイントを見ていきます。

    【生活する場所】

    特別養護老人ホーム(特養)

    ・どんな場所?

    入居条件は原則として要介護3以上で、常時介護が必要な高齢者を対象とし、看取りに対応する施設もあります。

    定員29人以下の「地域密着型」と、定員30人以上の「広域型」があります。

    ・薬局薬剤師との関わり

    薬局の薬剤師が施設を訪問し、入居者の薬を届けたり、服薬状況を確認したりすることがあります。

    医療保険による「服薬管理指導料3」や「施設連携加算」を算定可能です。

    ・居宅療養管理指導

    特養は介護保険施設であり、居宅療養管理指導の対象となる「居宅」には含まれないため、原則として居宅療養管理指導は算定不可です。

    例外として、末期がんの患者さんには医療保険による在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定が可能です。

    介護老人保健施設(老健)

    ・どんな場所?

    病院での治療を終えた高齢者などが、数ヶ月の入所期間の間に在宅復帰を目指し、リハビリテーションや必要な医療・介護を受けながら生活する施設です。

    ・薬局薬剤師との関わり

    老健では施設内の医師・薬剤師が薬剤管理を行うため、外部の薬局薬剤師が関わるケースは限定的です。

    一部の専門的な薬学的管理が必要な薬剤では、外部の医師による処方箋が発行され、外部の薬局薬剤師が薬剤を持参して訪問する場合があり、その際は「服薬管理指導料3」を算定できることがあります。

    ・居宅療養管理指導

    老健は「介護保険施設」であるため、原則として居宅療養管理指導は算定不可です。

    介護医療院

    ・どんな場所?

    長期療養が必要な要介護高齢者に対して、医療と介護を提供する施設です。

    喀痰(かくたん)吸引や経管栄養などが必要な方も受け入れ可能です。

    ・薬局薬剤師との関わり

    介護医療院では施設内の医師・薬剤師が薬剤管理を行うため、外部の薬局薬剤師が関わるケースは限定的です。

    一部の専門的な薬学的管理が必要な薬剤では、外部の医師による処方箋が発行され、外部の薬局薬剤師が薬剤を持参して訪問する場合があり、その際は「服薬管理指導料3」を算定できることがあります。

    ・居宅療養管理指導

    介護医療院は「介護保険施設」であるため、原則として居宅療養管理指導は算定不可です。

    有料老人ホーム

    ・どんな場所?

    食事・入浴・排せつなどの日常生活の支援や、介護サービスなどを受けられる施設です。

    介護サービスを施設の職員が提供する「介護付き有料老人ホーム」、必要な介護は外部の訪問介護などを利用する「住宅型有料老人ホーム」、食事などの生活支援はありますが介護の提供はない「健康型有料老人ホーム」の3種類があります。

    ・薬局薬剤師との関わり

    入居者の処方箋を受けて調剤し、施設へ薬を届けます。

    必要に応じて一包化や服薬カレンダーへのセット、服薬状況・残薬・副作用の確認などを行います。

    ・居宅療養管理指導

    要介護・要支援認定を受けており、通院が困難であるなどの要件を満たせば、薬局薬剤師による居宅療養管理指導が算定可能です。

    サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

    ・どんな場所?

    介護施設ではなく、一般の賃貸住宅に近い高齢者向けの住まいです。

    安否確認や生活相談などのサービスが提供され、必要な介護サービスは外部の介護事業所などを利用します。

    ・薬局薬剤師との関わり

    入居者の処方箋を受けて調剤し、住宅へ薬を届けます。

    必要に応じて一包化や服薬カレンダーへのセット、服薬状況・残薬・副作用の確認などを行います。

    ・居宅療養管理指導

    要介護・要支援認定を受けており、通院が困難であるなどの要件を満たせば、薬局薬剤師による居宅療養管理指導を算定可能です。

    認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

    ・どんな場所?

    認知症の高齢者が、少人数で共同生活を送りながら、食事や入浴などの日常生活の支援や介護を受ける施設です。

    原則として、施設と同じ市区町村に住民票がある人が入居の対象となります。

    入居者同士で簡単な家事を分担したり、認知症ケアのレクリエーションを行ったりしながら、できることを維持し、自立した生活を目指していくこともグループホームの特徴です。

    1つの共同生活住居(1ユニット)では、原則5〜9人の利用者が、家庭的な環境の中で生活します。

    ・薬局薬剤師との関わり

    入居者の処方箋を受けて調剤し、薬局からグループホームへ薬を届けます。

    必要に応じて、一包化や服薬カレンダーへのセット、服薬状況・残薬・副作用の確認などを行い、施設の職員と連携しながら服薬をサポートします。

    ・居宅療養管理指導

    要介護・要支援認定を受けており、通院が困難であるなどの要件を満たせば、薬局薬剤師による居宅療養管理指導を算定可能です。

    生活支援ハウス

    ・どんな場所?

    高齢などにより一人で生活することに不安がある方が、生活相談や食事の提供などの支援を受けながら生活する住まいです。

    ・薬局薬剤師との関わり

    入居者の処方箋を受けて調剤し、必要に応じて薬を届けたり、服薬状況や残薬などを確認したりします。

    ・居宅療養管理指導

    通院が困難であるなどの要件を満たし、居宅として取り扱われる場合には、薬局薬剤師による居宅療養管理指導を算定できることがあります。

    【自宅から通って利用する場所】

    通所介護(デイサービス)

    ・どんな場所?

    自宅から通って利用する介護サービスで、食事や入浴、機能訓練、レクリエーションなどを通じて、利用者の日常生活を支援します。

    基本的には日帰りで利用し、施設で生活するためのサービスではありません。

    ・薬局薬剤師との関わり

    基本的に薬は普段生活している自宅などに薬局から届けます。

    利用者の服薬状況や残薬、副作用などを確認しながら、必要に応じて一包化や服薬カレンダーへのセットなどを行うこともあります。

    ・居宅療養管理指導

    デイサービスを利用している方に対しても、自宅を訪問して要件を満たせば、居宅療養管理指導を算定できます。

    ただし、デイサービスの施設に訪問して、居宅療養管理指導を算定することはできません。

    居宅療養管理指導は、利用者の居宅を訪問して行うサービスだからです。

    そのため、薬剤師が訪問する場所はデイサービスではなく、原則として利用者が生活している自宅になります。

    通所リハビリテーション(デイケア)

    ・どんな場所?

    自宅から通って利用する介護保険による通所リハビリテーションです。

    医師の指示のもと、理学療法士や作業療法士などによるリハビリテーションを受け、心身の機能の維持・回復や日常生活への復帰を目指します。

    病院や診療所、整形外科などの医療機関に併設されている場合もあります。

    ・薬局薬剤師との関わり

    基本的に薬は、普段生活している自宅などに薬局から届けます。

    利用者の服薬状況や残薬、副作用などを確認しながら、必要に応じて一包化や服薬カレンダーへのセットなどを行うこともあります。

    ・居宅療養管理指導

    デイケアを利用している方に対しても、自宅を訪問して要件を満たせば、居宅療養管理指導を算定できます。

    ただし、デイケアの施設に訪問して、居宅療養管理指導を算定することはできません。

    居宅療養管理指導は利用者の居宅を訪問して行うサービスなので、薬剤師が訪問する場所は、原則として利用者が生活している自宅になります。

    小規模多機能型居宅介護

    ・どんな場所?

    住み慣れた自宅での生活を続けながら、「通い」を中心に「訪問」「泊まり」を組み合わせて利用できる介護サービスです。

    利用者の状態や生活状況に合わせて、必要なサービスを柔軟に利用できることが特徴です。

    ・薬局薬剤師との関わり

    基本的に薬は、普段生活している自宅などに薬局から届けます。

    利用者の服薬状況や残薬、副作用などを確認しながら、必要に応じて一包化や服薬カレンダーへのセットなどを行い、サービスの職員とも連携して服薬をサポートします。

    ・居宅療養管理指導

    小規模多機能型居宅介護を利用している方に対しても、自宅を訪問して要件を満たせば、居宅療養管理指導を算定できます。

    ただし、「通い」で利用している施設に訪問して、居宅療養管理指導を算定することはできません。

    小規模多機能型居宅介護は「通い・訪問・泊まり」を組み合わせるサービスですが、薬局薬剤師が居宅療養管理指導を行う場合は、原則として利用者が生活している自宅を訪問すると考えると分かりやすいです。

    郷ツトム
    郷ツトム

    施設・サービスごとに居宅療養管理指導が算定できるか表にまとめました。


    ③薬剤師が在宅対応できるか判断するポイント

    高齢者施設や介護サービスに関わるとき、「薬を届けてほしい」と依頼されても、その場所で居宅療養管理指導を算定できるとは限りません。

    薬剤師が在宅対応できるか迷ったときは、次の5つのポイントで整理すると分かりやすくなります。

    【1】その人はそこで生活しているのか?

    まず確認したいのが、その場所が利用者の生活の場なのか、それとも通って利用する場所なのかということです。

    有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などは、利用者がそこで生活しているため、居宅療養管理指導の対象となる場合があります。

    一方、デイサービスやデイケアは自宅から通って利用するサービスなので、施設に訪問して居宅療養管理指導を算定することはできません。

    「住んでいる場所」と「通っている場所」を最初に区別することが重要です。

    【2】その場所は居宅療養管理指導の対象となるのか?

    「そこで生活しているから、居宅療養管理指導を算定できる」とは限りません。

    特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院などの介護保険施設では、原則として居宅療養管理指導を算定できません。

    一方、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホームなどでは、一定の要件を満たせば算定できます。

    そのため、「生活の場かどうか」だけでなく、「その場所が居宅療養管理指導の対象となるのか」まで確認する必要があります。

    【3】施設側と薬の管理・服薬方法についてどう連携するのか?

    在宅対応では、薬を届けるだけでなく、「誰が、いつ、どのように薬を管理して服用するのか」を施設側と確認することも重要です。

    例えば、一包化や服薬カレンダーへのセット、服薬状況・残薬の確認など、利用者の状態や施設の体制に合わせて薬の管理方法を検討します。

    ケアマネジャー、看護師、各フロアの責任者・担当者など、多職種の方々と患者さんの情報を共有し、治療を円滑に進められるよう連携することが重要です。

    ④まとめ

    高齢者施設への在宅対応では、施設の種類によって居宅療養管理指導の算定可否が異なるため、まずは利用者がどこで生活しているのか、その場所で算定できるのかを確認することが大切です。

    また、実際に薬を届ける際には、施設ごとに薬の管理方法やセット方法が異なることがあります。

    例えば、一包化した薬のラインの色分け、ホッチキスで止める順番、薬をセットする向きや並べ方など、施設独自のルールが決められている場合があります。

    「いつもの施設と同じやり方」で対応するのではなく、施設ごとのルールを事前に確認し、その施設に合った方法で薬を準備することも、スムーズな服薬管理につながります。

    薬剤師が施設在宅に関わる際は、算定できるかどうかだけでなく、施設のスタッフと細かなルールまで共有し、利用者が安全に薬を服用できる環境を整えることが重要です。

  • ビタミンB6とは?筋肉・脳・神経への働きや多く含む食品、医薬品まで薬剤師が解説

    ビタミンB6とは?筋肉・脳・神経への働きや多く含む食品、医薬品まで薬剤師が解説

    ビタミンB6は、アミノ酸(タンパク質)の代謝や脳・神経の働きに関わっています。

    筋肉の維持や神経伝達物質の合成にも関わるため、私たちの体にとって非常に重要な役割を担っています

    では、なぜビタミンB6は筋肉や脳・神経の健康維持に重要なのでしょうか。

    この記事では、ビタミンB6の作用機序や体内での働き、神経伝達物質との関係、多く含まれる食品、医薬品としての使われ方について、薬剤師の視点からわかりやすく解説します。


    ①ビタミンB6とは?体内での働きをわかりやすく解説

    ビタミンB6は、ビタミンB群の一つで、アミノ酸(タンパク質)の代謝に欠かせない栄養素です。

    体内では、PLP(ピリドキサールリン酸)という補酵素に変換され、多くの酵素反応を助けています。

    PLPは100種類以上の酵素反応に関わるとされ、特にアミノ酸の分解や合成、神経伝達物質の合成などに重要な役割を果たしています。

    私たちの体を構成する細胞や組織の多くは、アミノ酸(タンパク質)が材料として作られています。

    例えば、次のようなものもタンパク質(またはアミノ酸)を材料として作られています。

    • 筋肉
    • 皮膚
    • 髪
    • 爪
    • 酵素
    • ホルモン
    • 神経伝達物質

    しかし、食事から摂取したタンパク質は、そのまま体で利用されるわけではありません。

    一度アミノ酸へ分解され、その後、必要に応じて筋肉や皮膚、酵素、ホルモンなどのタンパク質へと組み立て直されます。

    この一連の反応を助けているのが、ビタミンB6です。

    そのため、ビタミンB6は筋肉だけでなく、皮膚や脳、神経など、全身の健康を支える重要なビタミンといえます。

    ②ビタミンB6はなぜ筋肉・脳・肌によいの?

    ここからがビタミンB6の一番面白いところです。

    ビタミンB6は「タンパク質の代謝を助けるビタミン」とよく紹介されますが、それだけではありません。

    実は筋肉や皮膚だけでなく、神経伝達物質の合成にも関わることで、脳や神経の正常な働きも支えています。

    では、ビタミンB6はどのような仕組みで体のさまざまな場所を支えているのでしょうか。

    アミノ酸の代謝を助け、筋肉の維持や修復を支える

    筋肉は主にタンパク質からできています。

    食事で摂取したタンパク質は、そのまま筋肉になるわけではなく、一度アミノ酸へ分解され、必要に応じて再び筋肉や酵素、ホルモンなどの材料として利用されます。

    ビタミンB6は、このアミノ酸の分解や合成を助ける補酵素として働いています。

    そのため、筋肉の維持や運動後の修復だけでなく、酵素やホルモンなど体内のさまざまなタンパク質を作るうえでも重要な栄養素です。


    神経伝達物質の合成を助け、脳や神経の正常な働きを支える

    ビタミンB6は、神経伝達物質を作る際にも欠かせない補酵素です。

    ・セロトニン(精神の安定)

    ・ドーパミン(意欲・やる気)

    ・GABA(興奮を抑える) 

    これらは脳や神経で情報を伝える役割を持ち、気分や意欲、睡眠、集中力など、私たちのさまざまな生命活動に関わっています。

    ビタミンB6はこれらの神経伝達物質を直接増やす薬ではありませんが、正常に合成するために欠かせない栄養素です。

    特に、神経の興奮を抑える働きをもつGABAは、ビタミンB6が補酵素として働くことで合成されます。

    そのため、ビタミンB6が不足したり、その働きが阻害されたりすると、GABAが十分に作られず、脳が興奮しやすい状態となり、けいれんを引き起こすことがあります。

    身近な例では、銀杏(ぎんなん)の食べ過ぎによる銀杏中毒があります。銀杏に含まれるギンコトキシン(4’-O-メチルピリドキシン)はビタミンB6の働きを阻害するため、GABAの合成が低下し、けいれんの原因となることがあります。

    通常量の銀杏を食べて問題になることはほとんどありませんが、一度に大量に摂取すると発症することがあるため注意が必要です。

    また、生まれつきビタミンB6(PLP)を十分に利用できないビタミンB6依存性てんかんでも、GABAの合成が障害され、けいれんが起こることが知られています。

    皮膚の健康を維持する

    ビタミンB6は、皮膚を構成するタンパク質の合成や代謝を助けることで、皮膚細胞の正常な生まれ変わり(ターンオーバー)を支えています。

    そのため、不足すると皮膚や粘膜の細胞が正常に生まれ変わりにくくなり、皮膚炎や口角炎、口内炎などの症状が現れやすくなります。

    また、ビタミンB6は皮脂分泌の調節にも関与していることから、ニキビや脂漏性皮膚炎の治療で補助的に使用されることもあります。

    ただし、ビタミンB6を多く摂取したからといって、誰でも肌がきれいになるわけではありません。

    不足している人では症状の改善が期待できますが、健康な肌を維持するためには、ビタミンB6だけに頼るのではなく、栄養バランスの良い食事と規則正しい生活習慣を心掛けることが大切です。

    ③ビタミンB6を効率よく摂取するには?

    ビタミンB6を多く含む食品

    ビタミンB6は、肉や魚などの動物性食品だけでなく、豆類や野菜、果物にも含まれています。

    代表的な食品には次のようなものがあります。

    可食部100gあたりのおよその含有量を示していますが、食品の状態や調理法によって多少前後します。

    • にんにく (1.53mg)
    • 牛レバー (0.89mg)
    • まぐろ(赤身) (0.85mg)
    • かつお (0.76mg)
    • 鶏むね肉(皮なし) (0.64mg)
    • 鶏ささみ (0.64mg)
    • 豚ヒレ肉 (0.45mg)
    • バナナ (0.38mg)
    • まいわし (0.37mg)
    • さんま (0.33mg)
    • じゃがいも (0.30mg)
    • 納豆 (0,24mg)
    • アボカド (0.23mg)
    • ブロッコリー (0.22mg)
    • 玄米(炊飯) (0.21mg)

    ※参考文献:文部科学省『日本食品標準成分表(八訂)増補2023年』

    ビタミンB6は水溶性ビタミンですが、比較的熱には強いとされています。

    一方で、水に溶け出しやすい性質があるため、野菜をゆでる場合は煮汁ごと食べられるスープや味噌汁などにすると効率よく摂取できます。

    また、ビタミンB6はタンパク質の代謝を助けるビタミンであるため、タンパク質を多く摂取する人ほど必要量も増えることが知られています。

    筋力トレーニングをしている方や高タンパク食を意識している方は、肉や魚だけでなく、ビタミンB6もあわせて摂取することが大切です。

    ビタミンB6欠乏症

    ビタミンB6が不足すると、アミノ酸の代謝や神経伝達物質の合成が十分に行われにくくなります。

    その結果、次のような症状が現れることがあります。

    • 口角炎
    • 舌炎
    • 口内炎
    • 脂漏性皮膚炎
    • 手足のしびれ
    • 貧血
    • けいれん(重度の欠乏時)

    ビタミンB6は通常の食生活で不足することはあまりありませんが、このような習慣がある人は不足することがあります。

    • 偏食が多い人
    • ダイエット中の人
    • 飲酒量が多い人
    • 高齢者

    また、ビタミンB6は脳内で神経伝達物質を作る際にも必要なため、不足すると神経機能にも影響を及ぼすことがあります。

    ビタミンB6過剰症

    ビタミンB6は水溶性ビタミンであり、通常の食事量で過剰症が問題になることはほとんどありません。

    しかし、サプリメントなどで長期間にわたり大量摂取すると、感覚神経障害が起こることがあります。

    代表的な症状には次のようなものがあります。

    • 手足のしびれ
    • 感覚が鈍くなる
    • 歩きにくい
    • ふらつき

    この神経障害は大量摂取を中止することで改善することが多いものの、重症では回復まで時間がかかる場合もあります。

    「ビタミンだから安全」と自己判断で大量に摂取するのではなく、サプリメントを利用する際は推奨量を守ることが大切です。

    ビタミンB6は1日にどれくらい摂ればよい?

    日本人の食事摂取基準(2025年版)では、ビタミンB6の推奨量は年齢や性別によって定められています。

    日本人全体としてビタミンB6が大きく不足しているわけではありません。

    しかし、偏食や過度なダイエット、飲酒習慣などにより不足する人は少なくありません。また、タンパク質の摂取量が多い人では必要量も増えるため、日頃から肉や魚、豆類などとあわせてビタミンB6を含む食品を意識して摂取することが大切です。

    ④医薬品としてのビタミンB6

    ビタミンB6は食品やサプリメントだけでなく、医療用医薬品としても使用されています。

    単に「ビタミンを補う薬」というだけではなく、神経障害の予防や治療、薬の副作用対策など、さまざまな場面で活用されています。

    ビタミンB6製剤にはどんな種類がある?

    医療現場で使用されるビタミンB6製剤には、主に次のようなものがあります。

    • ピリドキシン塩酸塩
    • ピリドキサールリン酸(PLP)
    • ビタミンB群配合剤
    • 一般用医薬品(OTC医薬品)

    ピリドキシンは体内で活性型であるPLP(ピリドキサールリン酸)へ変換され、アミノ酸代謝や神経伝達物質の合成を助ける補酵素として働きます。

    また、ビタミンB6は単剤だけでなく、ビタミンB群配合剤や総合ビタミン剤にも含まれています。一般用医薬品(OTC医薬品)では、口内炎や肌荒れ、疲労時のビタミン補給を目的とした製品にも広く配合されています。

    実際にはどんな病気で処方される?

    ビタミンB6製剤は、ビタミンB6欠乏症だけでなく、次のような疾患や病態に対して処方されます。

    • ビタミンB6欠乏症
    • 妊娠悪阻(つわり)
    • 末梢神経炎
    • イソニアジド服用時のビタミンB6欠乏予防
    • 放射線治療に伴う悪心・嘔吐
    • 一部の抗悪性腫瘍薬による副作用の補助療法

    このように、ビタミンB6は単なる栄養補給ではなく、病気の治療や薬の副作用対策としても利用されています。

    イソニアジドでビタミンB6が処方される理由

    結核の治療薬であるイソニアジド(INH)を服用すると、ビタミンB6の働きが低下することがあります。

    これは、イソニアジドがビタミンB6と結合し、活性型であるPLPの量を減少させるためです。

    その結果、次のような副作用が起こる可能性があります。

    • 手足のしびれ(末梢神経障害)
    • けいれん

    そのため、イソニアジドを長期間服用する患者さんでは、これらの副作用を予防する目的でビタミンB6が併用されることがあります。

    注射薬はどんな時に使われる?

    ビタミンB6には注射薬もあり、病院では内服が難しい患者さんや、速やかな補充が必要な場合に使用されます。

    例えば、次のようなケースです。

    • ビタミンB6欠乏症
    • 高カロリー輸液(TPN)による栄養管理
    • ビタミンB6依存性てんかん
    • 重症の妊娠悪阻などで内服が困難な場合

    特に高カロリー輸液(TPN)を行う患者さんでは、ビタミンB6を含むビタミン製剤を点滴へ混合して投与することが一般的です。

    服用時の注意点(テオフィリン・レボドパなど)

    ビタミンB6は比較的安全性の高いビタミンですが、一部の薬剤との相互作用には注意が必要です。

    • テオフィリン

    気管支喘息やCOPDなどで使用されるテオフィリンを長期間服用している患者さんでは、ビタミンB6代謝への影響が指摘されています。

    ビタミンB6は神経伝達物質であるGABAの合成にも関与しているため、ビタミンB6代謝の低下は、けいれんリスクとの関連が議論されています。

    ただし、通常の治療で問題となることは多くなく、必要に応じて医師がビタミンB6を併用することがあります。

    • レボドパ

    パーキンソン病治療薬であるレボドパ単剤では、ビタミンB6によってレボドパの末梢代謝が促進され、薬の効果が弱くなることがあります。

    しかし現在主流となっているこれらの配合剤ではほとんど問題になりません。

    • レボドパ・カルビドパ配合剤
    • レボドパ・ベンセラジド配合剤

    そのため、現在の日常診療で過度に心配する必要はありませんが、薬剤師として知っておきたい相互作用の一つです。

    ⑤まとめ

    ビタミンB6は、水溶性ビタミンに分類されるビタミンB群の一つで、アミノ酸(タンパク質)の代謝や神経伝達物質の合成に欠かせない栄養素です。

    そのため、筋肉や皮膚、脳や神経など、全身の健康維持を支える重要な役割を担っています。

    不足すると、口内炎や皮膚炎、末梢神経障害などの症状が現れることがあるため、日頃からビタミンB6を含む食品をバランスよく摂取することが大切です。

    また、医療現場では欠乏症だけでなく、妊娠悪阻やイソニアジドによる副作用予防など、さまざまな場面で活用されています。

    ビタミンB6は、筋肉・脳・肌の健康を陰で支える「アミノ酸代謝の立役者」です。毎日の食事を基本に、健康づくりへ役立てていきましょう。