高血圧の治療では高い降圧力と即効性に加え、一部には狭心症にも有効なCa拮抗薬がよく処方されるというイメージを持っている方も多いかと思います。
逆にARBは比較的ゆっくりと降圧作用を発揮し、心不全に有効というところでしょうか。
今回はARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)の特徴を2つの観点から深掘りしてみました。
①臓器保護作用
ARBの特徴として、血圧を下げる降圧作用に加えて、臓器保護作用(腎保護作用・心保護作用)があります。
■腎保護作用
ARBは、腎臓の輸出細動脈を拡張させて糸球体内圧を下げ、糸球体の過剰なろ過を防ぐことで尿タンパクが減少します。実は尿タンパクが出ていること自体が腎臓への負担となります。
さらに糸球体硬化の進行による腎機能低下を抑制させる効果も期待できます。
ただし、ARB投与時には腎動脈狭窄の有無に注意が必要です。動脈が狭くなって血流が少なくなった腎臓にARBの輸出細動脈拡張作用が加わると、腎血流量がさらに低下します。
そうすると尿が作りにくくなることに加え、低酸素に弱い腎細胞がダメージを受け腎機能が急速に低下する恐れがあるからです。
■心保護作用
アンジオテンシンⅡは血管収縮を起こすだけでなく、心筋細胞の肥大・線維化を促進し、心筋リモデリングを引き起こします。
心不全患者の脳は血流が足りないと勘違いし、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン(RAA)系を活性化し、血液に水分とNaをため込むことで、心臓への負担を増加させることになります。
ARBのアンジオテンシンⅡ受容体阻害作用は間接的にアルドステロン分泌を抑え心筋リモデリングを防ぎます。つまりARBは心臓を守る降圧薬としての側面を持っているのです。
②血圧が安定して下がるのに2週間程度かかる理由
ARBの降圧作用には「速効性作用」と「遅効性作用」の2つがあります。
■速効性作用
投与初期からARBはアンジオテンシンⅡ受容体(AT₁受容体)阻害作用により、血管収縮を抑制し血圧低下が起こります。
■遅効性作用
アンジオテンシンⅡはアルドステロン分泌促進を起こします。アルドステロンは腎臓で水とNaの再吸収を増加させ、体液量を増やすことで血圧が上がります。
ARBのアルドステロン作用抑制により体液量の調整がゆっくりと進み、安定した降圧効果の発揮には数日〜2週間程度かかることが多いのです。
つまり、「血管拡張による即効性作用」と「体液量調整による遅効性作用」の両方があるので、ARBは開始後すぐに血圧は下がり始めますが、「安定して下がる」には2週間ほどかかるという説明がより的を得ているて言えるでしょう。
③腎動脈狭窄について
腎動脈狭窄がある場合はARBの使用は注意が必要と書きましたが、薬局で腎動脈狭窄の有無を確認することは簡単ではありません。
腎動脈狭窄の所見は、原因不明の重度高血圧や、左右の腎臓の大きさの差、または肺水腫などです。これらがある場合に検査が行われ、超音波やCT、MRI、腎動脈造影検査などの画像検査で診断を行うからです。
薬局薬剤師が注意すべき事としては、まずARBを開始する際には動脈硬化リスクのある方への経過観察です。
糖尿病や脂質異常症等の病歴、高齢者や喫煙者のような患者背景に注視しましょう。
さらに服用開始後には浮腫、倦怠感、乏尿が無いことを確認し、腎機能の検査値(eGFR、Cr、BUN、尿タンパク)に変化が無いかをチェックしましょう。
④まとめ
今回はARBの特徴を整理しました。
何年か前に先輩薬剤師からARBの特徴を教えてもらった過去があり、臓器保護作用や血圧が安定して下がる理由を改めて調べてみたかったからです。
次に新規でARBが処方された患者さんには今回の学びを活かしたいですね。
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